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利子の歴史

利子とは、貸借した金銭などに対して、ある一定利率で支払われる対価のことである。金融機関などから借りたお金に対しては当たり前のように利子が付く。高度成長の時代には銀行に預けたお金に対しても当たり前のように利息が付いてきたものだが、約20年続いている日銀の超低金利政策導入以来、利息がほとんど付かないのが当たり前になってしまった。平成という時代は平和であったが、低成長の時代でもあった。 日本の利子の歴史を紐解くと、律令体制の時代にコメなど租税として納められないほど困窮した百姓には、神への捧げものとして保管されていた米を貸し与えるということが為されていた。その場合、返す時には借りた米より多い米を神様に返礼するということが行われていたそうで、日本では利子という概念が何らかの形で認識されていたようだ。 ヨーロッパに目を転じると、古代ギリシャの海上交易でも利子を伴う貸付は広く行われていたそうであるが、アリストテレスは「貨幣が貨幣を生むことは自然に反している」(「政治学」1巻10章)と反論している。 宗教的には旧約聖書でも新約聖書でも、利得を期待せずに無償で貸すべきであるという教えが中世キリスト教にお...
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やめることの大切さ

コンサルティングに携わっていると、事業計画やKPI設定なのでよく訊かれる質問がある。「これで漏れはないでしょうか?」「何か抜けていませんか?」、あるいは最近のバズワード(特定の期間や分野で人気となった言葉のことであるが、もっともらしいけれど実際には定義や意味があいまいな用語)に対して、「どう対応したらいいか?」「他社はどうやっていますか?」というような質問を度々受ける。 調達購買部門は社内では守りに入っているケースが多く、社内の様々な「突っ込み」に対して防御する姿勢が強い傾向がある。何か言われても、「このように対応しています」とか、数字を示し「順調に推移しています」とか、説明という名の言い訳を常に準備しておかないと気が休まらないところがある。調達購買の仕事は上手くいっている時は目立たないが、ひとたび問題が発生するとやたら目立つ類の業務で、IT部門と似たようなことろがある。しかし、あれもやります、これもやっています、KPIはこのように50項目管理しています、っていうのが本当の調達事業計画であり、KPI管理であろうか? 歴史のある大企業の調達購買部門ほど、そういった傾向が強いように感じられ...
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アメリカ本土を爆撃した史上唯一の男

倉田耕一著「アメリカ本土を爆撃した男」を読んだ。奮戦記と思って読んだのだが、全く当てが外れた。読む進むうちに涙が滲んできてしかたがなかった。 その男、藤田信雄は帝国海軍きっての腕利きパイロットで、潜水艦に搭載されるたった全長8.5mの零式小型水上偵察機を操ってオレゴン州のブルッキングスという町の山中に1942年9月9日焼夷弾を打ち込んだ。 それに先立つこと5か月前の4月18日、日本は初めてアメリカによって本土空襲に見舞われた。米空母から発艦したドーリットル中佐が指揮する16機のB25は、東京、川崎、横須賀、名古屋、四日市、神戸を爆撃し、国際法で禁じられている「民間人に対する攻撃」(校庭掃射など)を行った。日本国民の怒りが沸騰するのは当然であった。 それを受けて、4月21日に軍令部に呼び出された藤田は、上記のオレゴン州森林への爆撃命令を受ける。サンディエゴの海軍基地でもなく、ロス・アンジェルスの飛行機工場でもなく、なぜ人もいない森林なのかと藤田は訝った。 作戦はこうである。アメリカの西海岸はレッドウッドなどの森林が多く、そこに焼夷弾を打ち込んで火災を発生させれば、折からの強風により大火災...
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国際機関

日本政府は昨年12月26日、クジラの資源管理について議論する国際捕鯨委員会(IWC)を脱退し、商業捕鯨を再開することを決定した。日本がIWCに加盟したのは1951年であるが、IWCは1982年に資源の枯渇を理由として、商業捕鯨の「一時停止(モラトリアム)」を決定している。日本は1988年に商業捕鯨を中断したが、その前年の87年から、商業捕鯨再開に向けた科学データの収集を目的とする調査捕鯨を開始した。商業捕鯨の中断から約30年にわたり、日本はIWCでその再開を訴え続けてきたが、先の総会で科学的データを根拠として商業捕鯨の再開を目指す捕鯨支持国27、動物愛護を主張する反捕鯨国41(棄権2)の前にIWCにおける商業捕鯨再開の大目標を断念した。 個人的にはもっと早く脱退していてもおかしくないと思っていた。過激暴力集団シーシェパードの資金集め材料の対象とされ、標的とされた和歌山県太地町の努力と訴えは世界的に見て私には余りに無力に写ったからである。事実、2007年の総会でも脱退は示唆されていた。裏話では、商業捕鯨再開によって国際社会からの批判を受けたくない外務省と、再開を訴え続けてきた捕鯨関係者や...
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わび・さび

昨年、十数年ぶりに金閣寺(鹿苑寺)を訪れる機会を得た。外人観光客が溢れ、その一行の流れについていく格好で庭園内を歩いていくうちに、何か外国の観光地にワープしたような感覚に襲われた。 金閣寺は室町幕府3代将軍足利義満が将軍職を子の義持に譲ったあと、1397年に西園寺を譲り受け2階3階を金箔貼りに一新し、政治の実権を握っていた山荘である。義満は南北朝の合一を果たし、有力守護大名の勢力を抑えて幕府勢力を確立した。また、明との勘合貿易で巨万の富を得て、その権勢を誇るため、また明への誇示もあって豪奢な金閣寺を造ったと思われる。4代義持も義満と同様に長男の義量(よしかず)に将軍職を譲ったが、その5代義量は夭折した。6代義教(よしのり)はくじ引きで決まり、僧から俗世に戻る還俗の上で、将軍職に就いた。くじ引き将軍の義教は幕府権力強化のために、強引な強権政治を行ったが、却って部下の守護大名の反発を買い、最後は謀殺されてしまう。義教の死後、幕府は急速に弱体化し、嫡男の義勝が8歳で7代目を継ぐも翌年死去。その弟の義政が幼年にして8代目を継ぐことになり、後に銀閣寺(東山慈照寺)を建立することになる。 金閣寺と...
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科学技術の進化から人の幸せを考える

先月28日、ヒトゲノム編集国際会議に出席した賀准教授は「ゲノム編集」を使った受精卵から双子が誕生したとその実験の説明を行った。同氏によると、研究に8組のカップルが参加したが、すべてのカップルについて、男性側がすべてHIV陽性で、女性全員はHIV陰性であり、HIV感染しにくくなるゲノム編集の研究の正当性を述べたという。同会議組織委員会の委員長を務める米カリフォルニア工科大学のデビッド・ボルティモア教授をはじめ、各国の専門家は賀氏の研究を倫理規則に反していると批判し、実験の真偽について疑問を呈した。 賀氏は中国当局が主導する海外の最先端技術を習得し中国に持ち帰る「千人計画」に参加する人物で、当初中国人民日報は「中国の疾病予防分野におけるゲノム編集技術の応用が歴史的成功に達した」と自画自賛したが、国内外からの批判が噴出したため、この数時間後、同記事は削除されている。そして中国科学技術部の高官は賀氏を「調査の上、処分する」と発言し、同氏は現在無給休暇中とされている。 科学者が後になって自分自身の発明を悔やんだものは過去いくつもある。ノーベル賞の創始者であるアルフレッド・ノーベルは彼の弟の命を奪...
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ブルー・オーシャン戦略

先月、「ブルー・オーシャン戦略」(以下BO戦略)の著者のひとり、INSEAD教授であるチャン・キム氏の講演を聴く機会を得た。「BO戦略」は2005年に刊行され、ベストセラーとなったが、競争の激しい既存市場「レッド・オーシャン(赤い海、血で血を洗う競争の激しい領域)」(以下RO)から、競争のない未開拓市場である「BO(青い海、競合相手のいない領域)」を切り開くべきだとする経営戦略は、当時米国から帰国し、競争の真っただ中にいた当時の私には、ある種の「絵空事」のように聞こえ、本書を手にすることは無かった。とはいえ、世界360万部、44カ国語に翻訳された世界的ベストセラーである本書の内容は表面的ではあるが、把握しているつもりでいた。 最近になって、「競争しない」という概念がいくつかの著書において、クローズアップされてきている。フェイスブックを初期から支えたピーター・ティール(テスラ、ユーチューブ、リンクトインなどの名だたる起業家を輩出したペイパルの伝説的共同創業者)は、トランプ大統領の政策アドバイザーを務め、「競争をしない唯一無二を目指す」という信念でDisruptive(破壊的)Innova...
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在留外国人、中国残留邦人

日本民族の定義とは何であろうか。現代的解釈で言えば、日本語を母国語とする日本列島にルーツを持つ人々ということになろうか。法的解釈からすれば日本政府に申請すれば日本のパスポートが発行される人々ということになろうか。やや歴史を遡れば、大和民族に加え、近世になって日本人に組み込まれたアイヌや琉球民族が包含されよう。いわゆる植民地時代には武力による征服国家に組み込まれた被征服国家の民族も含まれるであろう。 人類学的に言えば、縄文人が日本人のルーツということになっている。2千数百年ほど前には大陸から朝鮮半島や山東半島を経て、渡来人がやってきて(弥生人)席巻したと言われるが、今や縄文人と弥生人の区分けを論じ差別する一般人はいない。 人類のルーツはアフリカのホモ・サピエンスということは定説である。そこから3つのルートで世界に出ていった人類の全ての遺伝子が日本にやってきたとDNAの研究結果から元大阪医科大学学長の松本秀雄氏は言う。氏によれば、現代日本人の半数が弥生人系統、3割が縄文人系統と解析されている。私が最初に外国を旅したのは大学3年生の時であるが、韓国ソウルの百貨店において、店員から容赦なく韓国...
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死刑制度を考える

2018年7月6日、麻原彰晃を含め、オウム真理教幹部7人の死刑が執行された。同月26日には残りの6人も執行され、一連の事件で死刑が確定した計13人全員の死刑が執行された。平成時代の事件は平成時代で終息させるという行政の考え方が反映されたかどうかわからないし、これにより被害者の心が安寧になったかといえば、そういったことでもないだろう。しかし、一連の事件で29人が死亡(殺人26名、逮捕監禁致死1名、殺人未遂2名)し、負傷者が6000人を超える日本犯罪史において最悪の凶悪事件はひとつの節目を迎えたことになる。 これらの死刑執行に対して、テレビ各局はワイドショー宜しく執行の度に逐次報道し、新聞各社は死刑廃止が世界の潮流と称して「文化人」のコメントに大きく紙面を割いた。死刑制度に対しては賛否両論あるのは当然であろう。人が人を裁き命を奪うというのは許されることなのか。それは戦場で人を殺すのは国際法によって免罪されていることと同次元の話ではないものの、正当防衛は許されて、正当防衛できなかった被害者はしょうがないと割り切ることは、普通の人間の感覚を有していればできることではないだろう。 人権活動団体の...
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星野君の二るい打

二ヶ月ほど前になるが、一時色々な形で有名になった前川喜平氏の講演を聴く機会があった。醜聞も気にはなったが、教育行政に長年携わってきた前川氏が、今、そしてこれまでの日本の教育をどのように総括するのか若干の興味をもって聴いた。ちなみに前川氏の祖父は前川製作所の創業者、前川喜作氏で、喜作氏が創設した和敬塾(目白台にある男子学生寮)からは村上春樹氏や隅修三氏(東京海上ホールディングス代表取締社長)など錚々たる文化人、経済人、政治家を輩出している。ちなみに前川喜平氏の妹と中曽根康弘氏の長男弘文氏とは婚姻関係にあり、前川喜平氏と中曽根康弘氏は親戚関係にあたる。教育基本法を改正したいと教育審議会を立ち上げた中曽根元総理と、国家介入から教育の自主性を守らなければならないとする前川喜平氏の二人が、政治家と官僚という立場で、少なくとも前川氏の視点に立てば、対立含みの忖度という位置にあったのは、皮肉な話であったと言えよう。 「星野君の二るい打」という話は、この前川喜平氏の講演の中で初めて聞いた。道徳の教科化が始まる平成30年の教科書に載っていて、前川氏曰く、この話はまさに「個」よりも「全体」を重んじる滅私奉...