10月27日投開票の衆議院選挙において自公の与党は過半数233を確保できず、279議席から215議席へという大敗に終わった。自民党だけで56議席減らし、公明党は8議席を失い、選出されたばかりの石井代表は辞意を表明した。議席を伸ばしたのは立民党+50、国民党+21(立候補者が足りず3人は他党へ割り振る結果に)、れいわ+6、参政党+2、保守党+3である。議席を減らしたのは公明-8、維新-6、共産-2。
これを3年前の衆議院選挙との比較で得票増減数で見てみると、今回の選挙結果の本質が見えてくる。自民党1991万⇒1458万(―533万)、立民1149万⇒1155万(+6万)、国民259万⇒616万(+357万)、公明711万⇒596万(-115万)、維新805万⇒509万(-296万)、れいわ221万⇒380万(+159万)、共産416万⇒336万(-80万)、参政0⇒187万(+187万)、保守0⇒114万(+114万)、社民101万⇒93万(-8万)。
立民の得票はほとんど増えていないにも関わらず50議席増の大勝。自民党は26.7%もの自民支持が他党へ流れているのである。自民党支持者あるいは自民党に票を投じた人が立民や共産に流れることは信条的にまずないであろう。ではどこへ流れたかと言えば、国民民主党、参政党、日本保守党である。維新の一部からもこれら保守3党に流れたと考えると数字はほぼ一致する。自民党が保守系支持者に愛想をつかされ自滅した結果が今回の選挙の本質である。
実はこの流れは岸田政権から連綿とつくられてきた。安倍政治を引き継ぐ体で始まった岸田政権であるが、アメリカ議会で「宏池会」を強調するあたりから派閥代表丸出しのスタートであった。総理総裁になったにも関わらず林芳正氏に派閥の実権を握られまいと、岸田総理はなかなか派閥の会長の座を明け渡さなかった。欧米では見直しの機運が高まっていたLGBT理解増進法をG7サミットの体裁のためだけに拙速に成立させ、いわゆる統一教会問題では、憲法に謳われた「宗教の自由」をそっちのけにした挙句に、派閥を解体し〇〇チルドレンなる信条のない議員達を野に放った。政治資金収支報告書の不記載問題においては検察が起訴できたのは会計責任者止まりで断念したにも関わらず、野党や左翼メディアの「裏金問題」の土俵に自ら乗っかり、選挙において非公認10名、離党2名、比例重複させない34名という二重罰を加え、結果当選18名・落選28名という自滅の道を突き進んだ。挙句の果てに選挙4日前に露見した非公認の支部長の口座に2000万円を振り込んだとする明細書がこともあろうか共産党の機関紙である赤旗にすっぱ抜かれるという失態がダメを押した。自民党内に左翼シンパがいるのか、共産党のスパイが職員にいるのかわからないが、自民党内のタガは完全に緩んでしまっていることが明々白々になった。
自民党は2009年の総選挙において下野を余儀なくされるという苦汁を舐めている。その時の野党自民党総裁は谷垣氏であった。党再生の礎として「新たな綱領」を伊吹氏を中心に策定している。
1. 我が党は常に進歩を目指す保守政党である
2. 我が党の政策の基本は:①世界に貢献できる新憲法の制定、➁日本の主権は自らの努力により護る、③自助自立、共助・公助、④地域社会と家族の絆・温かさを再生する、⑤成長戦略と雇用対策、⑥財政の効率化と税制改正により財政を再建するといった項目を挙げている。
保守本流を謳うのであれば、立党以来の党是である憲法改正を推し進めるべきであるし、先人の教え(自助自立を基本とし、助け合いの生き方を忘れない。匠の心・商人道・武士道・土に根差した勤勉さ)を今一度、現代に合わせた読み直しをすることこそ自民党の本筋であるし、保守支持者が求めているものである。
私なりに色々調べた結果わかったことは、安倍一強と言われた時代でも自民党内には保守が半分もいなかったという実態である。一般に日本国民の3割は保守支持岩盤層と言われる。この保守岩盤層をしっかりと押さえて、安倍総理は国政選挙6連勝を成し遂げ長期政権を築いたのである。それでも憲法改正は様々な反対勢力によって実現できなかった。それほど、反保守勢力はメディアも含め強大なのである。軍事大国にひた走り、台湾統一を掲げる中国、強権権威主義を隠さないロシア、核大国を標榜し続ける北朝鮮を目の前にして、今の日本ほど安全保障において脆弱な国はないであろう。しかも国民の危機意識は圧倒的に低いことがそれに輪をかけている。
今回の衆院選を経て、自民党は多くの保守議員を失い、非主流を歩んできた石破総理他、残党は自民党を全く党是とは異なるリベラル政党の看板に付け替えてしまった。そもそも推薦人20人の半分近くを二階派武田氏から借りてきた石破総理の党内基盤は脆弱極まりなく、首相指名選挙を行う特別国会11月11日を経ても首相の座に当面座り続けることができるであろうが、石破おろしすらできない自民党は初めからレイムダックという最悪の政権運営にならざるを得ない。国民民主党と何とか折り合いをつけて予算を通したところでお役御免といったところがオチであろう。来年の7月27日の参院選までには新しい顔を選ばなければ、この退潮が止まることはない。
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