アメリカがイスラエルと共に2月28日、イランに対して「大規模な戦闘作戦」を実施し、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師を殺害した。
攻撃の2日前には、アメリカとイランは、イランの核開発計画をめぐって間接的に協議していた。合意には至らず、協議が終了してすぐ実力行使の軍事作戦に踏み切った形である。毎度のことだが、他国の元首を斬首していいのかいつも疑問に思う。2024年3月より日本人の赤根智子氏が、国際刑事裁判所(ICC)のトップであり、氏は重大な犯罪者は訴追・処罰を受けることになっていると強調している。しかし、プーチン露大統領やイスラエルのネタニヤフ首相らに逮捕状を出してはいるものの、加盟国が執行せず、骨抜き状態である。つまり他国の元首を殺害することは、国際社会の平和と秩序を乱す行為で罪に問われるものの、裁かれないのが実態と言わざるを得ないのである。
近年の他国への軍事介入は、記憶に新しいところで、アメリカによるベネズエラ介入(2026年)である。マドゥーロ大統領を拘束し、親米国家を樹立する事や、ベネズエラから中国への石油輸出を止める意図もあったようだ。明らかに国際法上の主権侵害にあたると思われるが、お咎めらしき状況にはない。
ロシアによるウクライナ侵攻(2022年〜継続中)も、イスラエルによるガザ地区への軍事作戦(2023年〜継続中)も国際社会は主権侵害として非難しているが、1日で戦闘を止めると豪語したトランプ大統領も成果らしき成果を生んでいない。
さらに歴史を遡れば、
➀アメリカが共産主義の拡大を防ぐために本格介入し、泥沼化したベトナム戦争(1960年代〜1975年)
➁親ソ政権がイスラム武装勢力の反乱(ウサマ・ビンラディン)で崩壊しかけたため、ソ連がアフガニスタン侵攻(1979年〜)
➂ノリエガ将軍の拘束を目的とした介入で、アメリカがパナマを侵攻(1989年): 2026年のベネズエラ事案と類似
➃NATOが、人道的惨劇を防ぐという名目で国連安保理の決議を経ずにユーゴスラビア連邦共和国を空爆したコソボ紛争(1999年)
➄のちに反米に転じたウサマ・ビンラディンと9.11を契機に、「テロとの戦争」を開始した米アフガニスタン紛争(2001年〜2021年)
➅パキスタンに潜伏していたビンラディンの殺害作戦(2011年)―アメリカはパキスタン政府に事前に通知せず、無断で領空を侵犯して特殊部隊を送り込み実行
➆イスラム過激派の台頭を抑える目的で、フランスがマリに軍事介入(2013年〜)、後に治安悪化の中で撤退を余儀なくされる
国連による国際協調主義と表では平和を唱えてはいたものの、程度の差こそあれ、実力行使が行われてきた歴史がここにある。アメリカばかりをあげつらう積りはないが、第二次世界大戦終結以降、最強国として君臨してきたのは間違いなく世界の警察官アメリカである。
さらにアメリカ建国までの歴史に遡ると、18世紀末から19世紀にかけて、金銭による購入を通じて着実に領土を広げてきたアメリカの領土拡大戦略に突き当たる。それは時には、戦争を伴った強引な手段を用いていたことも浮き彫りになる。
➀ルイジアナ買収(1803年):フランスから1,500万ドルで購入し、肥沃な農地を手に入れる
➁フロリダ買収(1819年):スペインから500万ドルで購入し、アメリカ南東部の統治を確立する
➂メキシコ割譲(1848年):現在のカリフォルニア州やニューメキシコ州を含む土地を2,500万ドルで購入する提案をアメリカがメキシコに持ち掛ける。しかし、メキシコが拒否したため戦争に突入。米墨戦争に勝利したアメリカは、肥沃な農地、鉱物資源、さらに太平洋へのアクセスを得ることになる(提案より1,000万ドル少ない1,500万ドルを支払う)
➃ガズデン購入(1854年):アメリカが鉄道建設のためにメキシコから土地を購入(1,000万ドルで提案)
➄アラスカ購入(1867年):当時はロシア領であり、ロシア政府は財政難のためこの地域を手放す(720万ドルで提案)。後々、金や石油といった膨大な資源が発見されアメリカは大儲け
➅米領ヴァージン諸島購入(1917年):デンマークに対して2,500万ドルを支払い、ヴァージン諸島を購入。カリブ海での影響力を強化し、ドイツなど敵対勢力の排除を意図
2025年1月20日、アメリカ大統領に返り咲いたトランプ大統領は、就任前にパナマ運河の管理権、グリーンランドの購入意欲を示した。
パナマ運河は世界貿易の要衝であり、大西洋と太平洋を結ぶ戦略的な位置にある。その管理権を得ることで、アメリカは国際物流における主導的地位をさらに強化すると共に、南米を事実上傘下に置くことが可能になる(中国の影響力も排除)。
一方、グリーンランドは豊富な地下資源を持ち、温暖化により海氷面積の縮小で新たな航路ができ、艦船や商業船も通れる余地が広がった。また北極圏での軍事的影響力を拡大するための拠点としても重要視している。
断片的なニュースだけを観ていると、トランプ大統領はジャイアンより酷いと思ってしまうが、歴史を俯瞰してみれば、良し悪しは別にして、まさにこれこそがアメリカと変に頷かされてしまう部分もある。道理を大切にし、筋を通す日本人には理解できない世界の掟がそこには厳然として存在する。


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