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下請法改め取適法、その真意は

2026年1月1日に「中小受託取引適正化法」(通称)が施行された。正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」で、略称は取適法とされた。正式名称はあまりに長すぎて、覚えるのは大変であるが、真顔でこのように長い法律名を国会で通すあたりが、庶民感覚(民間)との大きな乖離を感じる。多分、公正取引委員会と中小企業庁の偉い人たちが最終決定して国会に提出したのであろうが、思わず「まじかっ」と思ってしまった。ちなみに生成AIで日本で最も文字数が多い法律名を訊いてみると、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定及び日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の実施に伴う道路運送法等の特例に関する法律」だそうで、なんと110文字。こんな法律名があると、多少長くても、関係者は異常に長いとは思わなかったのでしょうね。 閑話休題。公正取引委員会と中小企業庁の連名で発行されている「下請法・下請振興法改正法の概要」によると、下請法改正の背景・趣旨等として: ●「近年の急激な労務費...
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社会に求められる人物像の変遷

新年を迎えるにあたって、毎年調達関連のブログを書いてきましたが、昨今の時代の激変、つまり生成AIから始まって、フィジカルAIに至る急速な発展を目の当たりにするにつれ、人類史における転換点がやってきたという感を強く持ちます。よって、調達という狭い枠に嵌ることなく、今後、人間は何をよすがに生きていけばいいのか、という難問に対峙しなければならないとの想いを強く持つに至りました。 私が生を受けた1958年からの道のりは、多くが貧しい子供時代から高度経済成長の波に乗って、青春を謳歌した若者時代、そして平成の失われた30年(人によっては転落の50年とも言うが)から、何とか希望を見出しつつある現在と言えるように思います。 昨年は昭和100年(戦後80年)と言われ、未だ敗戦を核とした昭和の総括が行われていないことを自覚させられる年でありました(これについては次回書きたいと思っています)。さらに遡れば、江戸末期から明治維新(大政奉還)に至る激動の時代も司馬史観を代表とする見方や、それは江戸時代を否定し、明治維新を美化しすぎているという反論など、いまだ議論は絶えません。 何事にも二面性・多面性はあるでしょ...
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海洋国家(シーパワー)と大陸国家(ランドパワー)

シーパワー(Sea Power、制海権)という概念はアメリカの海軍少将・歴史家であったアルフレッド・セイヤー・マハンが1890年に「The Influence of Sea Power upon History, 1660–1783」で提唱したものである。それに呼応する形で、イギリスの地理学者・政治家であるハルフォード・ジョン・マッキンダーが「The Geographical Pivot of History」(1904年)という論文(のちに「民主主義の理想と現実」として書籍化)でランドパワー(Land Power)の重要性を説いたことが、その原型と言える。以降、海洋国家と大陸国家の特徴及び、それぞれがどのように国家の繁栄と安全保障に関わるかを論じた書籍が数多く出版されている。 海洋国家の特徴は、海が天然の城壁となり侵攻を受けにくいことから、海運と交易を基盤に自由貿易体制を維持し、繁栄を図ることを基本に据えている。その結果、交易を通じて多様な文化や情報が入ってくるため、比較的開放的で柔軟な社会・文化が形成されやすいとされる。(例:イギリス、日本、アメリカ、イタリア、ノルウェー、オースト...
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大国の盛衰

6年ぶりに米中首脳が直接会談を行ったが、時間は1時間40分と比較的短いものだった。中国の習近平国家主席と会談した米トランプ大統領は会談後、対中追加関税の引き下げを発表し、レアアース(希土類)をめぐる「障壁」が解消されたと述べた。習氏も中国国営メディアに対し、「主要な貿易問題」の解決に向けて合意したと語った。お互い面子を保った形ではあるが、結果は中国がレアアースの輸出規制を1年間見送ることで、米国の100%の追加関税を回避した。それ以外では米国がフェンタニルのアメリカ流入について対策が不十分だとし、中国からの輸入品に20%の追加関税を課していたが、これを10%に引き下げると米国が妥協し収まった。アメリカ産大豆の輸入拡大でも合意をし、トランプ氏は「10点満点中12点だ」と自画自賛したものの、目的とする国際貿易の不均衡は全く進展しなかった。明らかに中国側が優位を保って会談が終了したという印象である。 トランプ氏がアメリカ・ファーストを標榜し、多くの国際機関からの脱退を決定している。今年1月にはWTO、パリ協定、7月にはユネスコから脱退し、さらに国際人権理事会からの離脱や、国際組織への拠出金削...
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北イタリアを訪れて

イタリアはご存じのように長靴の形をした共和制国家で、20の州により地方行政が営まれています。それぞれ独自の文化と歴史的背景を持っていることを少し学ぶことができました。今回の旅はローマに次ぐ第二の都市ミラノを中心とするロンバルディア州を起点に世界遺産ドロミテ街道を辿ってみました。 イタリアはその文化や歴史的背景から北、中央、南に三分されます。ファッションの都として有名なミラノや、水の都ヴェネチアを含む北イタリア。首都ローマや、ルネッサンスの中心地で芸術の都フェレンツェを含む中央イタリア。そしてピザ誕生の街ナポリやシチリア島を含む南イタリアとなります。 これまで主に南イタリアの豊富な魚介類料理を楽しんできた私にとって、今回提供された北イタリアの料理の数々は、北と南でこんなに違うのは何故だろうという好奇心を沸き立たせるものでした。南イタリアは地中海に囲まれていて温暖な乾燥地帯、魚介の持ち味や野菜の風味を生かし、オリーブオイル・レモン・ハーブによって軽やかで香り高い味付けに特徴があります。もちろんパスタやピザは代表的な料理ですが、トマトやニンニク、香草、酸味を効かせるなど、地域の伝統を大切にし...
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現地ガイドを通じて見たカザフスタン~キルギス旅行記

成田から仁川経由でカザフスタンの旧首都アルマティ空港に到着した。航空会社はアシアナ航空だが、来年にはこの便はなくなり、カザフスタンの航空会社であるエア・アスタナが日本との直行便を運航するらしい。そうなれば、日本と中央アジアの距離感は物理的にも心理的にもグッと近づくものと思われる。 カザフスタンは中央アジアの大国で、面積は世界No.9、人口は1900万人で、石油や天然ガス、ウラン等の資源に恵まれGDPにおいても中央アジアの60%を生み出す、比較的裕福な国である。ユーラシア大陸の中央部に位置し、南西は世界最大の湖カスピ海に面しており、アクタウは唯一の不凍港である。国土の大部分は砂漠や乾燥したステップ(草原)であり、草原国と言っていい。人口の7割はイスラム教スンニ派で、飲酒はOKなことから「なんちゃってムスリム」と言えなくもない。17%ほど居るロシア人は主にロシア正教信者であり、モスクと教会の数も人口構成を表しているように感じる。 翌日、最もシェアを取っていると思われるHyundai製のSUVをいかついロシア人ドライバーの運転で北西に180㎞走り、タムガル峡谷へ向かう。紀元前14世紀以降に数...
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デジタル時代の民主主義

7月20日に投開票が行われた参院選では自民・公明の与党の苦戦が予想される中、後半には組織票の踏ん張りで改選47議席を確保したものの、石破首相が目指していた自公過半数には届かず、与党が両院で過半数を失う史上初の両院少数政権に陥りました。 これまでの通例からすれば、即首相辞任という状況ですが、石破首相は日米関税交渉合意を着実に実行していくとか、いつ大地震がやってくるかわからないとか、政治空白を避けなければならないとか、理由にもならない理由を並べて続投に固執しています。 一方で、「石破辞めるな!」のデモが数百人規模で行われ、ほぼ「安倍政権を許さない!」とプラカードを上げていた人たち、つまり保守台頭を恐れるリベラル活動家による前代未聞の自民党総裁支援という状況を生んでいます。しかしながら、保守本流を掲げていた当の自民党は、今や保守とリベラルの混在カオス政党になり、しっかりとした輪郭がなくなってしまった単なる利益分配型政党になり下がっています。 自民党の比例当選者の名簿を見ると、全国郵便局長会・全国建設業協会(この2枠は特定枠として最優先)・日本医師連盟・全国農政連・日本看護連盟・神道政治連盟・...
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ゼブラ企業

最近、「ゼブラ企業」という言葉を聞いた。近年スタートアップ界隈で注目されている社会的意義と持続可能な利益を両立させる企業を指す言葉らしい。すぐに思い出したのは、CSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)である。CSVの概念は、2011年にハーバード・ビジネス・スクールのマイケル・E・ポーター教授とマーク・R・クレイマー研究員が発表した論文で提唱され、広く認知されるようになった。この概念は、企業が本業を通じて社会的な課題を解決し、経済的な価値と社会的価値の両立を目指すというものである。つまりCSVは、企業が社会のニーズや問題に取り組むことで社会的な価値を創造し、その結果として経済的な価値も創造されるというアプローチである。これは、従来のCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)とは異なり、慈善活動やボランティア活動として社会貢献を行うのではなく、企業の事業戦略として社会課題に取り組むという点が特徴である。 CSVの起源を遡ると、2006年にネスレが発表したCSRレポートにCSVの考え方につながる事例が掲載されていた...
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パナマの憂鬱

パナマといえば、パナマ運河を真っ先に思い浮かべるであろう。太平洋と大西洋を結ぶ海の要衝で1日36隻150万トンもの物資が通過する。スエズ運河やキール運河と並んで、世界三大運河である。スエズ運河は地中海と紅海を結ぶエジプトにある運河だが、イエメンの親イラン武装組織フーシ派による紅海の船舶攻撃で航行の自由が脅かされている。キール運河は日本にはなじみが薄いが、北海とバルト海を結ぶドイツにある運河である。パナマ運河は米中対立の矢面に立たされ、CKハチソン(香港系)所有の港湾事業を米系企業連合に売却を計画したものの、中国当局が審査を強化したため、実現に不透明感が出ている。世界物流のリスクは地政学リスクを伴って高まる一方である。 パナマの憂鬱の一つ目は、運河の水不足である。2023年には過去100年で最大の干ばつと言われるほど降雨量が減少しており、運河の通航に多大な影響を与えている。というのも、パナマ運河の通過点にはガトゥン湖という標高26メートルの湖があり、これを超えなくては通航できない。この湖の水を使用しながら、一つの閘門(こうもん)ごとに8~9メートル程度の水位調整を行いながら、3つの閘門を...
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激動期それぞれの日中3姉妹

【浅井の3姉妹】 戦国時代、北近江に浅井長政という大名がいた。浅井には今も歴史に名前を残す3人姉妹がいる。茶々、初(1歳下)、江(ごう:さらに3歳下)である。浅井は織田信長の妹で戦国一の美女と言われたお市を妻にして同盟を結んだが、1570年の金ヶ崎の戦いで信長を裏切り、その後も対立が3年続いた。最終的には1573年の小谷城の戦いによって長政は自害(享年29)を余儀なくされ、3姉妹の兄・万福丸は信長の命により羽柴秀吉によって串刺しにされたという(享年9)。 お市は3人の娘とともに藤掛永勝によって救出され織田家に引き取られるが、1582年の本能寺の変により信長が討たれると、お市は信長の重臣柴田勝家と秀吉との協議(取り合い?)により結果、勝家のもとに嫁ぐことになる。ところが、その翌年には勝家と秀吉の対立が先鋭化し、賤ヶ岳の戦いで勝家が敗れることになる。最終的には覚悟を決めた勝家は、お市に越前北ノ庄城外退去を勧めたものの、それを拒否したお市は勝家とともに自害する(お市享年37)。 両親を失った3姉妹は富永新六郎という武士によって、両親を死に追いやった憎き秀吉のもとに届けられる。当時50歳を目前...