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中国の統治の歴史~習近平はどこへ向かうのか~

秦の始皇帝が中国全土を統一したのは紀元前221年である。中華統一を果たした始皇帝は度量衡・文字の統一、郡県制の実施など様々な改革を行った。また、匈奴などの北方騎馬民族への備えとして、それまでそれぞれの国が独自に作っていた城壁を繋げて整備し「万里の長城」に結実させた。思想的には焚書坑儒を断行し抵抗勢力の芽を徹底的に摘む政策を取った。阿房宮という壮大な宮殿の建築も行い、農民は過酷な労働に苦しみ、さらに極度の圧政まで加えられた。そのことで全国各地の不満を高めてしまい、のちの反乱を生むことになる。 統一から11年後の紀元前210年に始皇帝は死去したが、主を無くした秦では全国に反乱の火の手が上がり、秦は紀元前206年に滅亡する。のちに前漢初代皇帝に就くかの有名な劉邦に降伏した秦は実はたった15年の治世で終わりを告げてしまったのである。 秦は周から王朝を奪取して成立したが、周、とくに前半の西周は儒教において理想的な時代とされている。周の政治制度は、周王が一族や功臣、地方の有力な土豪を諸侯と任じ、一定の土地と人民の支配権を与え、統治した封建制である。周王と諸侯、諸侯とその家臣である卿大夫は、擬制的な...
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コロナ禍に想う~時間の束縛から解放へ~

私は8年前にサラリーマンを卒業したので、通勤(痛勤)の毎日からはだいぶ遠ざかっている。コロナ禍も丸一年を超えて二年目に突入して漸くワクチン接種が始まったところに、今度は変異株の猛威で東京オリンピック・パラリンピックの開催に赤信号が灯っている。勤め人の多くは在宅勤務やリモートワークに切り替わり、私の知人は今年5回しか会社に行っていないと言っていた。毎日定時の通勤が当たり前だった現代社会において、外出禁止令にも近い緊急事態宣言発令下で改めて「出社」とは何だったのだろうかと思いを巡らす人も少なくないのではないか。会社に居れば仕事をしたことになるといった楽天家はその存在が危うくなっているだろう。時間は全ての人に平等に与えられている(難病を抱えた方は別として)。金持ちは1日100時間を手に入れられるということにはならない。 懐中時計は1700年代に王侯貴族など上流階級の人々が使い始めたようであるが、腕時計の開発や量産が始まったのは19世紀後半になってからである。きっかけは戦争で、砲撃などの作戦を間断なく実行するために兵士は迅速に正確な時刻を知る必要があり、トレンチコートの中に入れている懐中時計で...
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超限戦~戦争は既に始まっている~

皆さんは「超限戦」という言葉を聞かれたことがあるだろうか。英語ではUnrestricted Warfareと略され、軍事は勿論のこと、経済や文化も含めて全てを例外なく総合的に利用して相手を打ち負かしていく戦術のことである。1999年に刊行された「超限戦」(喬良・王湘穂著)では「ハイブリッド戦」と訳されているが、現代において軍事的な攻撃は兵器の高度化と大衆世論の台頭によって、その使用は非常に限定されるようになってきた。それ自体は喜ばしいことであるが、それゆえ他方で非軍事的な活動のウェイトが過去の戦争に比べて圧倒的に大きくなってきている。 最近の例を挙げれば、ロシアのアメリカ大統領選挙への介入である。このことは米国家情報長官室(ODNI)による報告書「最近の米国選挙におけるロシアの活動と意図に関する評価(2017年1月)」および米司法省モラー特別検察官の調査報告書(2019年3月)によって、2016年米大統領選挙におけるロシア政府の大規模かつ組織的な介入が認められている。具体的にはロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)によるサイバー攻撃によって、米政党・大統領候補者関係者ら300名超にフィ...
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ユーゴスラビア

今の若い人の中にはユーゴスラビアという国があったことを知らない人もいるだろう。ユーゴスラビアはバルカン半島地域に存在した社会主義国家である。ユーゴスラビアとは「南スラブ人の土地」を意味し、国名として「ユーゴスラビア」を名乗っていたのは1929年から2003年までの期間である。第二次世界大戦前は王国であったが、大戦後はパルチザン(共産主義主体の勢力)を率いるティトーが社会主義を標榜し連邦共和国を樹立した。この社会主義国家を率いていたティトーが1980年死去すると、各共和国は分離独立を主張し、さらには民族間の軋轢による内部分裂を起こし、ほどなく紛争・民族独立・崩壊への歴史を進めることとなる。 私が学生時代には「七つの国境、六つの共和国、五つの民族、四つの言語、三つの宗教、二つの文字、一つの国家」をティトー(私はチトーと習った)のカリスマ性とバランス感覚によって平和裏に統治してきた社会主義国家のひとつの見本として認識されていた。 「七つの国境」とはイタリア、オーストリア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、ギリシャ、アルバニアである。1941年ヒトラー率いるドイツと同盟を結んだイタリア、ハン...
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魚は誰のものか

子供のころ食卓には魚が並ぶことが多かった。新潟の海っぺりに住んでいたので、新鮮な海産物が安く手に入ったことが理由であろうが、私は子供のころ魚はあまり好きではなかった。煮たカレイや糸こんにゃくとタラの親子煮などが記憶に残っているが、子供のころは肉の方が食べたかった。一口に肉といっても給食に出るような肉は脂身の多い豚肉の細切れが多く、残すとダメということで飲み込むように食べていた悪夢が蘇る。すき焼きもたまに食卓に出たが、何の肉だったのか記憶は定かではない。自分で稼ぐようになってからは、稼ぎに応じて舌でとろけるような牛肉やジビエ等も食べることができるようになったが、50も半ばを超えるようになるとサシの入った霜降りより赤身の方を好むようになった。そして、今はもっぱら魚を好むようになり、子供のころ苦手だった煮魚やシンプルに塩だけで焼いた焼き魚が好物となっている。昔、安価に手に入ったであろう魚類は世界、特に中国の需要増に伴い価格が上昇し、かつて庶民の味方と言われていたサンマやイワシなども手が届かなくなり、せいぜい冷凍可能な干物が食卓にあがる程度の時代になってしまった(サンマの値段は30年前の2倍)...
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言論の自由と事実の確証

トランプ氏は史上初めてSNSをフル活用した大統領として名前を残すだろう。大統領に就任する前からTwitterを選挙戦のツールとして使いこなして大統領の座を射止め、その後も休むことなくSNSによる発信を行ってきた。2017年1月20日就任後の半年間の月平均つぶやき回数は136回。その後も数字を伸ばし続け、選挙戦只中の20年9月には722回に達し、なんと1時間に1回はつぶやいた計算になる。政敵のバイデン氏を「Sleepy Joe」などと貶めたりする投稿に眉をしかめる向きもあり、アメリカ民主主義の質低下と分断を煽ったことに違いはない。 大統領選挙の選挙人集計結果を承認するための上下両院合同会議が始まる21年1月6日、民主主義国家の旗手とも言える米国で議事堂突入という目を疑わんばかりの事態が発生した。トランプ氏は選挙敗北後もSNSで執拗に選挙の不正を訴え続け、当日は支持者に「我々は敗北を認めない。ここから議事堂まで行進せよ」とホワイトハウス前に集まった数千人の支持者を煽ったことが前代未聞の事態に至った理由であることは疑いない。 Twitterはトランプ氏が今後も暴力行為を扇動する可能性があるこ...
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「命懸け」が今の日本にはない

2020年は随分と窮屈な一年でしたね。言うまでもなくコロナ禍が理由ですが、家で物思いにふける時間も例年になく多かったと思います。小学生の卒業アルバムの寄せ書きに「世界平和」と書いたことが突然思い出されました。小学6年生でしたから無邪気に書いたものと思いますが、人生62年生きてきて、それぞれが一断面を表していると理解はしていても、殺伐とした世の中を垣間見るにつけ、また新たに「世界平和」を想う2021年の幕開けの日です。 昨年は子供たちの間でのみならず一部の大人たちにも「鬼滅の刃」に熱狂した人々が多かったようです。「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は11週連続首位で映画興収324億円を突破し歴代1位となりました。その映画の主題歌であるLiSA「炎」が日本レコード大賞を受賞しました。私はほとんど話の中身は知らないのですが、聞きかじったところでは、「少年漫画のヒット作に共通している点として『友情』『努力』『家族』『恋愛』『勝負』などの要素が鬼滅の刃でもストーリーの随所に盛り込まれている。ただ、鬼滅の刃がほかの作品と異なる点は、『死』に向き合うシーンが非常に多い。ストーリーにおいて重要な役割を果た...
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条約改正への道のり

日本は諸外国からの開国を求められて1858年に米露蘭英仏とつぎつぎ通商条約を締結した。遡ること1854年にはペリー提督率いる黒船の圧力に屈し、補給の利便性を重視した日米和親条約(片務的最恵国待遇)を結ばざるを得なくなった。その後、下田に駐在したハリスから通商条約の締結を強く求められ、老中堀田正睦(まさよし)は列強との戦争を避けるために孝明天皇からの勅許を得ようとするが失敗。1858年にはアロー戦争(第二次アヘン戦争)で清が英仏に敗れ、その二の舞になってはたまらんと大老井伊直弼は勅許を得ぬまま日米修好通商条約を結ぶこととなる。井伊は2年後桜田門外の変で攘夷派に暗殺されたが、治外法権(磔や打首を目撃した外国人がこれを主張するのは無理からぬこと)、関税自主権、先の片務的最恵国待遇といった不平等条約が長く残ることとなった。 一度締結した不平等条約を改正する道のりは並大抵のことではなかった。明治維新を経て岩倉具視外務卿等が条約の期限切れを前に1872年に、条約改正に必要な近代国家への足掛かりを目的に欧米へ視察を行った。各国の元首に国書を手渡したものの、条約改正の糸口は掴めなかった。逆に欧米各国の...
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ワークマンの「データ経営」と「しない経営」

WORKMAN Plus+が今月10日に我が家の近くに開店する。以前はLAWSON STORE 100があって、それなりに重宝はしていたが、工事中の建機の隙間からまだ取付前の横向きのワークマンの看板を見て、私は年甲斐もなく小躍りした。これまでは遠方のワークマンの店へ商品をいくつか買いに行っていたし、話題の商品はネット購入も試みた(残念ながらすぐに売り切れてしまい、未だに欲しい商品を手に入れられないでいる)。そういった状況であったので、たった徒歩300歩(多分100mほど)に憧れの店ができるとなり、開店を心待ちにしているところである。 ワークマンの快進撃はTVでも紹介されているが、店に行くとその安さと品質の良さに思わず買う予定に無かったものまで買ってしまう程の魅力があり、他社のものに比べて圧倒的なコスト・パフォーマンスの良さ、つまり商品力が強みである。 IR情報を一瞥すると、「売上高15か月連続2桁増」「純利益9期連続過去最高益」「客数・客単価前年同期比増」「楽天から2020年2月末で撤退」「PB商品の中国生産割合67%」「製造原価率64%」「店舗数は843、新規出店は全て新業態のワーク...
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アメリカ大統領選挙と民主主義の行方

2020年のアメリカ大統領選挙はバイデン候補が270超を獲得し、78歳という歴代最高齢の第46代大統領に就任することが決定的となった。トランプ大統領は選挙の不正を訴え法廷闘争に持ち込もうとしているが、相変わらずツイート調で、提訴できるほどの証拠を提示できないでいる。事前の選挙予測では常にバイデン氏がリードしていたが、4年前のような「隠れトランプ支持者」が顕れてデジャブとなる可能性も少なからず報じられた。事実、選挙中盤ではトランプ氏が激戦州といわれるフロリダやオハイオを押さえ、トランプ氏再選ほぼ決まりと発言するコメンテーターもあった。そのコメンテーターは今どのような気持ちでいるのだろうか。 いずれにせよこの4年間のトランプ大統領の政権運営に対する評価が下された。Four more yearsか、No more Trumpかという選択の選挙であったと言えよう。経済面では実績を上げ、低賃金労働者の賃金は5%ほど上がり、株価も上昇した。しかし、治安維持と人種差別問題のはざまで、Black Lives Matterに代表されるような国内における分断を煽ってしまったことは否めない。アメリカ第一主義...