
超限戦~戦争は既に始まっている~
皆さんは「超限戦」という言葉を聞かれたことがあるだろうか。英語ではUnrestricted Warfareと略され、軍事は勿論のこと、経済や文化も含めて全てを例外なく総合的に利用して相手を打ち負かしていく戦術のことである。1999年に刊行された「超限戦」(喬良・王湘穂著)では「ハイブリッド戦」と訳されているが、現代において軍事的な攻撃は兵器の高度化と大衆世論の台頭によって、その使用は非常に限定されるようになってきた。それ自体は喜ばしいことであるが、それゆえ他方で非軍事的な活動のウェイトが過去の戦争に比べて圧倒的に大きくなってきている。 最近の例を挙げれば、ロシアのアメリカ大統領選挙への介入である。このことは米国家情報長官室(ODNI)による報告書「最近の米国選挙におけるロシアの活動と意図に関する評価(2017年1月)」および米司法省モラー特別検察官の調査報告書(2019年3月)によって、2016年米大統領選挙におけるロシア政府の大規模かつ組織的な介入が認められている。具体的にはロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)によるサイバー攻撃によって、米政党・大統領候補者関係者ら300名超にフィ...