ブログ

日系人強制収容への賠償の歴史

1941年12月8日(日本時間)日本陸軍による真珠湾攻撃をきっかけに、アメリカは日独伊枢軸国と戦争状態に入った。アメリカ政府はアメリカ本土及び中南米諸国に住む、日系アメリカ人と日本人、ドイツ系アメリカ人とドイツ人、イタリア系アメリカ人とイタリア人に対して「敵性市民」として監視の目を向けることになった。その後、スパイの嫌疑をかけられた日系人数千人(最終的には約17,500人)は検挙されていたが、1942年2月19日のフランクリン・ルーズベルト大統領令9066号によって12万人の日系人が着の身着のまま(財産没収)の形で辺境10か所の強制収容所に送り込まれた。そこは住居とは言えないような急ごしらえの木造バラックで砂塵が吹き込み、冷暖房もなく、衛生管理も不十分で食中毒や下痢が多発した。同じ敵国であったドイツ系・イタリア系には一切強制収容の事実はない。 勤勉な国民性から経済的に成功している日系人への反感、アメリカの伝統に馴染もうとせず日本文化を大切にする異邦人への違和感、黄色人種であるという人種差別(黄禍論)が主な理由であろう。 日本がポツダム宣言を受諾した1945年の10月から11月にかけて強...
ブログ

不寛容社会にひと言

COVID-19第7波もようやく下火になってきて、マスクはいつ外すんだといった話題がメディアでも取り上げられるようになってきました。私自身は数か月前から余程の人込みでない限りは外ではマスクを外していますが、まだマスクをして歩いている方の方が大多数ですね。個人的には咳をする人や口角泡を飛ばす人以外はマスクしなくてもいいと当初から思っていましたが、世の中には他人のマスク未着用を激しく指摘する「マスク警察」なる人々も一部にはいました。 エリザベス女王の国葬でもマスクをしている人はほぼいませんでした。先日感染症の医師がワイドショーでその点を訊かれると「お国柄が違いますし。。」などと、およそ専門家らしからぬ発言をしていたので、びっくりしました。マスク着用の科学的根拠はどこにいっちゃたんでしょう?? 先月は伊豆箱根バスで、マスク着用を拒否した客を途中で降ろしたとしてバス会社が国土交通省中部運輸局から行政処分を受けましたが、一方的にバスの運転手を非難するのはどうなのかとも思います。運転手が他の客のことを気遣って行ったのかもしれませんし、会社からそのような指導があったのかもしれません。バス内には「マス...
ブログ

「核」「原発」アレルギー

経済産業省によると、2022年度冬季の電力不足が懸念されている。一般に安定供給に必要な予備率は3%とされ、予測では東京において1.5%程度になるのではないかと報じられている。この背景には新型コロナウイルス禍からの経済回復に伴う電力需要の増大や、ロシアに対する経済制裁措置に伴う液化天然ガス(LNG)の供給不足などが理由とされている。同時に産業界や一般家庭においての節電協力も並行して行われつつあるが、政府はよほどポイントで国民を釣れると思っているのか、基準不明な節電ポイントなる議論もされている。 資源を持たず、さらに原子力発電所を思うように再稼働できない日本のエネルギー自給率は、2019年で12.1%と経済協力開発機構(OECD)に加盟する36カ国中35位という極めて低い水準にある。ちなみに1位のノルウェーは816.7%、2位のオーストラリアは338.5%と日本から見れば羨ましいほどのエネルギー大国である。 今般、岸田首相は新たに原発7基の再稼働方針を明らかにし、次世代原子炉の開発や建設を検討することを表明した。私はこれを素直に評価したい。 日本もこれまで無策で来たわけではない。2014年...
ブログ

米中対立の狭間で揺れる日本の行方

ほぼ3年前に「日本の立ち位置」というタイトルで埋没していく日本の姿をブログで書きました。 今回はちょっと異なる観点から米中対立の狭間で日本はどう生き抜いていけばいいのか論じてみたいと思います。 アメリカのペロシ下院議長が8月3日台湾を訪問し、蔡英文総統と会談して台湾との連帯を強調しました。ペロシ議長は大統領権限を継承する順位が副大統領に次ぐ2位の要職で、アメリカの現職の下院議長が台湾を訪問するのは1997年のギングリッチ氏以来25年ぶりだそうですから、異例の訪台と言っていいでしょう。1997年当時のギングリッチ氏(共和党)は、アメリカが1979年に台湾と断交して以来、アメリカ下院議長として初めて台湾を訪れ、李登輝総統などと会談しました。ギングリッチ氏は「中国が武力によって台湾を統一しようとすれば、アメリカはあらゆる手段で台湾を防衛する」などと述べ、中国側は「内政干渉だ」として強く反発しています。25年前の再現ですから、25年間台湾をめぐる米中の対立の基本構造は変わっていないということです。今回もペロシ氏の訪台を阻止しようと、中国から事前の口撃や牽制がありましたが、それを跳ね返す形でペロ...
ブログ

出処進退

宇宙飛行士の野口聡一さん(57)が6月1日付けで、宇宙航空研究開発機構(JAXA)を退職した。野口さんは1996年に宇宙飛行士候補者に選ばれ、これまで3回宇宙に滞在。2020~21年に国際宇宙ステーション(ISS)に滞在した際の往復では、米国の新型民間宇宙船「クルードラゴン」に日本人として初めて搭乗した。ISS滞在時間は計335日17時間56分で日本人最長を記録した。退職の記者会見において野口さんは次世代に道を譲り、今後は研究機関などを中心に活動すると抱負を語った。 野口さんは立花隆氏の著書「宇宙からの帰還」に感化されて宇宙飛行士を目指したそうで、今後は宇宙体験や船外活動が人間の内面にどのような変化をもたらすかといった当事者本人が研究主体かつ研究対象となる「当事者研究」に本格的に参画し、宇宙飛行士としての新たな社会還元(障害者就労、アスリートの燃え尽き症候群対策など他分野への応用も視野)を模索しているとのことである。 たまたま目にしたHarvard Business Review2013年3月号にてThe Best-Performing CEOs in the World(世界のCEO...
ブログ

医療費の無駄

横浜から川崎に引っ越して1年になる。引っ越しして困るのは病院探しである。齢還暦を超えると体のあちこちにガタがきて、医者のご厄介になることは必定である。近所の良い病院を一から探すのは苦労するが、最近はネットで口コミも書いてあるので、参考にはなるが、見ると聞くとは大違いということも少なくない。年老いてご厄介になるのは成人病の内科クリニック、歯医者、眼医者などが代表的であろう。 引っ越しとコロナ禍を言い訳にして、3年ほど高脂血症と高尿酸症の薬をさぼっていた。毎日の薬の服用に飽きてきたこともある。「薬のやめどき」等という本も読んで勝手にやめてみたりもした。遡ること30年前に初めてのアメリカ赴任(フロリダ)から帰国して健康診断を受けたところ、赴任中の食べ放題・飲み放題がたたり、4つの指摘を受けた。それ以降、真面目・不真面目な薬の服用を繰り返し、生活習慣病と付き合ってきた。最新数値の高さにビビり、薬服用の再開を決めたところである。やはり痛風にはなりたくない。まあ、これは本人の不徳の致すところで致し方ない。話はこれからである。 病院というところはカルテを自分の所有物と思っているようで、一切コピーなど...
ブログ

ポリコレからの言葉狩り

最近は何でも言葉を短縮してしまうので、「えっ?」と聞き返したくなることが多い。耳が遠くなってきた証かも知れない。そういった言葉の一つに「ポリコレ」がある。「ポリコレ」とはPolitical Correctnessの略で「パリコレ」ではない。さらに当たり前のように「PC」とか言われてしまうとパソコンビジネスに身を置いていた私としては話の方向性を見失ってしまう。Wikipediaによると、ポリコレは「社会の特定のグループのメンバーに不快感や不利益を与えないように意図された政策または対策などを表す言葉の総称であり、人種・信条・性別などの違いによる偏見や差別を含まない中立的な表現や用語を用いることを指す。政治的妥当性とも言われる」とある。 「差別」をするべきではないという論理には大方の人が賛同するであろう。人種差別、男女差別、障碍者差別、貧困差別、職業差別など、現実社会に目を向ければ「差別」なるものは枚挙にいとまがないほどである。しかしながら、単なる「区別」が「差別」として扱われるようになると、マイナー(少数)がメジャー(多数)を食い殺す結果になりかねない。「区別」と「差別」は全く違う概念では...
ブログ

「ブルシット・ジョブ──クソどうでもいい仕事の理論」(デヴィッド・グレーバー著)

アメリカの人類学者デヴィッド・R・グレーバー氏による著書「ブルシット・ジョブ──クソどうでもいい仕事の理論」は個人的に言えば、ローレンス・J・ピーターの「ピーターの法則」(レイモンド・ハルとの共著)以来の社会学領域における名著である。残念ながらグレーバー氏は2020年9月享年59歳で亡くなってしまったが、遺作「The Dawn of Everything: A New History of Humanity」が昨年出版されている。Bullshitはアメリカにおいてはほとんど放送禁止用語扱いの言葉ではあるが、その言葉を敢えて用いることによって現代の多くの仕事がクソどうでもいい仕事になっていることを強烈に印象付けている。 18世紀半ばから19世紀にかけて起こった産業革命によって多くの肉体労働が機械化され、人間は多くの苦役から解放された。家庭内においても家事が洗濯機、掃除機、ミシン、炊飯器、電子レンジ等の家電製品によって軽減された。肉体労働に従事していた男たちは新しい職場を求め、うまく生活の基盤を作った人もいれば、転職に成功せずに暮らし向きを悪化させた人もいた。多くの時間を家事に奪われていた...
ブログ

ウクライナ侵攻~プーチンの蛮行~

政治学を志した者の端くれとして、今般のロシアのウクライナ侵攻に関して何等かの思いを書き記さなければならないと心底思う。言うまでもなく、これは現代の国際社会において許されざるべき蛮行である。「この軍事行動は、明らかにウクライナの主権及び領土の一体性を侵害し、武力の行使を禁ずる国際法の深刻な違反であり、国連憲章の重大な違反です。」と林外務大臣談話が外務省HPに掲載されている。 国連の無力さはこれまでも取り沙汰されてきたが、最大の問題は安全保障理事会常任理事国が第二次世界大戦の戦勝国のみ(厳密にいえば、戦勝国は中華民国であって、中華人民共和国ではない。中華人民共和国は1971年に21回目の国連加盟申請の投票で加盟が認められたが、中華人民共和国は国連に宛てた1972年9月29日付の書簡で、中華民国が批准した多国間条約を中華人民共和国が遵守する義務はないと主張している。それゆえ、中華民国から安全保障常任理事国の権利を引き継いだのではなく、横取りしたというのが実態である)で構成されていて、各国に拒否権が与えられていることである。つまり常任理事国の蛮行を国連の場では制御できないということが今般のロシ...
ブログ

ギリシャ神話

ギリシャ神話に興味を惹かれたのは、「岸壁に鎖で繋がれたアンドロメダ姫を海獣から救う英雄ペルセウス」を主題とした絵画がいくつもあることを知ったのがきっかけだった。ペルセウスは翼のあるサンダルを履き宙を飛び、あのブランド名にも使われているエルメス(ゼウスの子)から授かった金剛の鎌ハルペー(刀剣)を右手に、左手には怪物メドゥーサの首を掲げ海獣に立ち向かう。メドゥーサは首を打ち取られたとはいえ、眼光の魔力は消えず、海獣はその魔力によって石と化し、ペルセウスはアンドロメダを救い出す。ペルセウスはのちにアンドロメダと結婚するが、アンドロメダには婚約者がいたので、その顛末は単純ではない。 アンドロメダがなぜ岸壁に繋がれていたかというと、その母カシオペアが自らの美貌は神にも勝ると豪語したことから、怒った神々から生贄にされたもがアンドロメダだった(なぜカシオペアではないのか? 白雪姫の話はこの話をモチーフにしてる?などギリシャ神話は突っ込みどころ満載で楽しい)。 ペルセウスはアルゴス王の娘ダナエ―と最高神ゼウス(様々なものに変身して人界に現れ、あちこちに子供をつくる何でもありの浮気者)との間に生まれた子...