調達購買10の原理原則

2019年6月3日 at 10:36 AM

今回は調達購買の原理原則について論じてみたい。製造業と一口に言っても様々な業種があり、購入品の種類や特性も数多くある。非製造業においても外部から全く何も購入しないという企業は存在しない。何らかの商品やサービスを提供するにあたって、外部への依存無しに価値ある完成品を創り上げることは不可能と思われる。あらゆる調達購買部門に共通する原理原則として次に掲げる10項目を参考にしていただきたい。

①調達倫理の確立:法令遵守はもちろんのこと、法律に違反しないから何をやってもいいということにはならない。取引に際して、嘘を言ってはならない。騙してはならない。ビジネスにおける会社対会社間、個人対個人間において約束をしたことを守るのが基本である。やむを得ない事情により、約束が守れなかった場合には誠実にその弁済を図るべきである。国際取引において意図して騙そうとする組織や個人がいるかもしれないが、約束を守ろうとしたあなたが悪いわけではない。しかし、相手を見極めることが出来ずに安易に騙されたとあってプロとしては失格である。

②取引の公正・公明・公平:会社を代表して取引に当たるあなたは個人の嗜好で与えられた権限を濫用してはいけない。取引先の決定・購入価格の決定に至るプロセスは組織として定型化されなければならない。そのプロセスに沿って選定・決定を行い、社内の第三者からどうしてその取引先とその価格が決定されたのかを問われたら理路整然と説明できなければならない。取引を求める候補先に対して等しく門戸を開き、等しく情報を提供することによって、そのプロセスは始められなければならない。

③投機買いの禁止:必要なものを必要な量だけ、必要な時に購入する当用買いが基本である。安いから今沢山買うとか、今必要ではないけれど単価が安くなるからまとめて買うとかは調達購買の亜流である。経済は毎日動いているので、需給は変動するし、在庫量・流通量も日々変わる。所要の確実性、在庫費用、キャッシュフロー等を勘案し、企業としてリスクが取れる範囲での工夫を否定するものではないが、基本ではない。

④発注・受入・検収の分離:その物品・サービスを必要とする部門と発注部門とは分離する必要がある。ソフトウェアなど形として見えにくいものは尚更であるが、必要部門が発注・受入・検収の全てを行うことは架空発注の可能性を飛躍的に高める。発注・受入・検収をそれぞれ別の部門で行う為には仕様が明確になっていなければならない。そうでなければ、発注部門は取引先に必要な物品を伝えることはできないし、検収部門が検査をし、間違いなく発注したものであるかどうかを確認することはできない。

⑤自給の原則:発注する物品が複雑であればあるほど、サプライチェーンは長くなる傾向がある。いわゆる二次外注先・三次外注先と広がり、原材料先にまで至るのに物流・商流ともに見えない存在になってしまう。かと言って、その複雑な商流・物流の全てに絡もうとする企ては労あって成果は乏しい。管理技術面においても信用に足る取引先に発注し、必要な購入品は取引先に自給してもらうのが基本である。材料支給してもらわなければ競争力が保てない取引先はいずれ他の面でも競争力を保つことができない。

⑥直接取引の原則:気が利いた能力の高い商社や代理店はありがたい存在であるが、製作している取引先との直接取引が調達購買の基本である。直接取引によって当該物品や取引形態における工夫を活かす余地が生まれるようになり、最適購買に近づくことができる。仲介業者が入ることで問題や課題に気づきにくく、場合によっては覆い隠されてしまうことも少なくない。

⑦コスト分析と査定能力:どのような商材であっても、バイヤーとしてその発生コストに注目しなければならない。製作プロセスに通じ、どのようなコストが、どのような形で発生しているのかを知ることでコスト改善のヒントが見つかる。精査するのは簡単ではないが、変動費と固定費に分けて分析することも重要である。あなたの買値は取引先の変動費以下にはならない。しかし、取引先の変動費の中には二次外注先の固定費が含まれていることも忘れてはならない。 

⑧リスク管理:取引におけるリスクを軽減することはバイヤーとして重要なミッションである。取引先の経営状態を把握し、ビジネス上のリスクを低減しなければならない。特にビジネス上欠くべからざる調達品に対しては緻密なリスク対策を講じる必要がある。リスクには国際紛争から自然災害、為替変動、港湾ストライキ等様々あり、経済のマクロとミクロの両眼でみる癖をつける必要がある。

⑨安定調達:物品・サービスを安定的に調達できる取引先選定が重要である。自社の商品やサービスが顧客に長年提供することを前提にしている企業ほど、その重要性は大きい。調達供給問題が自社のビジネスに直結する場合や、生産終了後も保守部品を長きにわたって提供を受けなければならない企業ほど、目先のメリットのみに目を奪われて「安物買いの銭失い」となってはバイヤーの面目丸つぶれである。

⑩サプライヤー戦略構築:上記9つを総合して、自社の調達品ごとのサプライヤー戦略を構築する必要がある。同舟と呼ぶべきビジネスパートナーはどこか、自社とのベクトルが合致する企業と単なる取引関係を超えたビジネスパートナーとしての関係性を強化していくことが自社の競争力強化につながる。長年、1社購買のまま続いているとか、購入金額が多くはないのに、競争環境をつくりやすいがゆえに、必要数以上の取引先と取引し、どこからも最優先待遇を得られない等は健全な状態とは言えない。ビジネスを支える調達購買部門として定期的な見直しを講じていくことが一目置かれる調達購買部門への一歩である。