アメリカおよびイスラエルによるイランへの大規模な軍事攻撃から4か月が過ぎた。停戦に向けて仲介国のカタールおよびパキスタンの献身的な努力にもかかわらず、先が見通せない状況が続いている。
アメリカの最大関心事はイランが核保有国になることを阻止することに尽きる。世界で核兵器を保有していることが確実または公式に認められているのは、アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮の9カ国である。第二次世界大戦の戦勝国であり、国連安全保障理事会の常任理事国である米露英仏中は1970年発効の核兵器不拡散条約(NPT)によって保有を認められた特権的「核兵器国」である。インド以下の国々はNPT非批准または脱退し核兵器を開発し核実験を行って実戦配備されている。インドは中国とパキスタンに対する抑止力として、パキスタンはインドへの抑止力として核兵器を保有している。北朝鮮は自国の保全のためにアメリカと韓国に抗して保有している。イスラエルは公式には核保有を否定も肯定もしていないが、ホロコーストの歴史的記憶から、二度と自国民が絶滅の危機に立たされないための最後の安全弁として保有している。そしてアメリカはそれを容認している。
そもそも五大国のみがNPTによって核保有を認められ、その他の国は持ってはならんというのは「差別条約」であるという核開発国の指摘は正しい。その特権を持った五大国の一部でも核の脅しをかける状況が顕在化するに至っては核拡散を防止しようという理念が揺らぐのも致し方ない。
核開発の疑惑がある国のひとつがイランである。アメリカにとって対立国のイランが核兵器を保有することは大きな国家リスクを背負うことになる。それがアメリカのイラン攻撃の理由である。米イランは2015年オバマ時代にアメリカを含む6カ国(五大国+独EU)と核合意(包括的共同作業計画:JCPOA)を締結したが、2018年にトランプはイランの核開発の疑念が拭えず合意から離脱した。その背景には北朝鮮の核保有を阻止できなかった苦い経験がある。
米朝のやりとりは1994年カーター大統領と金日成主席との米朝枠組み合意にまでさかのぼる。前年に金日成がIAEA(国際原子力機関)の特別査察要求に反発し、NPT脱退を宣言したことがそのきっかけである。アメリカは軽水炉への転換を促し、それまでのエネルギー供給を約束してNPT脱退を押しとどめたが、息子金正日は2003年再度NPTからの脱退を宣言したため、米中朝の三者協議が持たれ、日露韓を加えた六者協議を開催することになった。2003年から2008年までの間に6回9次の会合が北京で開催されたが、その間2006年には北朝鮮が弾道ミサイルを日本海に向けて発射し、「核実験成功」を宣言した。2009年には二回目の核実験を実施し、事実上六者協議は瓦解し、北朝鮮は核開発にまい進することとなる。
2018年トランプ・金正恩間で史上初となる米朝首脳会談が行われ、朝鮮半島の完全な非核化に向けた共同声明が発表され、翌年2回の会談が持たれたが、米朝間は膠着状態が続いている。その間、習近平は平壌を訪れ金正恩と会談し、停滞している米朝非核化交渉について、習主席が北朝鮮側の主張に理解を示しつつ、あたかも中国が北朝鮮の後ろ盾になるかのように「建設的な役割」を果たす姿勢を示した。
その6年後の2025年、我々が目にしたのは北京の「抗日戦争勝利記念日」式典に金正恩が出席し、他国首脳よりも優先される形で、習近平とプーチンと共に最前列に並び、核保有強国としての地位と3か国のつながりを示す姿であった。かつての六者協議国が真っ二つに分かれたことを象徴するものであった。
2026年北京を訪れたトランプは習近平との間で、北朝鮮の非核化を「共通の目標」として確認したと発表したが、中国側は「非核化」という表現を明確に避け、北朝鮮の金与正は米国の発表を「虚偽である」と強く否定し、核保有国の地位は「絶対不退の限界線」であると北朝鮮の立場を強調した。
米国はイランの核開発において、北朝鮮の二の舞になることを恐れ、イスラエルに同調する(丸め込まれる?)形で、イランに攻撃を行った。
戦争を始めるのは容易いが、終えるのは難しいと先人は幾度となく後悔を交え警告してきた。世界では現在60以上の紛争が起きている。ドローンやAIの進化によって非対称戦が繰り広げられ、戦闘は形を変えてこれまで以上に長引く様相を呈してきた。核兵器が無力となる技術が開発されない限り、核兵器の拡散は続いていく、自国(己?と国土・国民)を守るために。


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