ブログ オルダス・ハクスリー著『島』はユートピア小説なのか?
少し前にNHK Eテレの「100分de名著」で英作家オルダス・ハクスリー著『すばらしい新世界』(1932年発表)を興味深く観た。科学技術と徹底した管理によって、苦痛や病気のない「完璧な幸福」が実現した未来社会を描いた不朽の名作と言われる。話の筋は、人間は胎生ではなく工場で人工受精・培養され、生まれながらに階級(アルファ、ベータなど)が決定されている。感情の乱れは「ソーマ」という副作用のない幸福薬でコントロールされ、一見すると誰もが満足しているように見えるが、そこには自由も家族も、深い思想も芸術も存在しないというディストピアを描いた小説である。当時の産業革命後の大量生産システムによる影響や、世界恐慌とファシズムの台頭といった時代背景が色濃く反映していると思われる。今の時代にも当てはまるような倫理を超えた科学技術の発達や管理社会の到来を予見していたとも言えるかもしれない。精神的な空虚さを「麻薬や快楽で人間を骨抜きにして支配する」という独自のディストピア像の後味はほろ苦いなんていうものではない。 番組の最後にハクスリー唯一のユートピア小説『島』があると言っていたので、さらに興味をもって図書館...
