イスタンブール(トルコ)

2017年1月20日 at 10:41 AM

トルコ共和国の首都イスタンブールはエキゾチックで魅力的な街である。1978年に庄野真代の楽曲で「飛んでイスタンブール」が大ヒットした。その頃は単に異国の地というイメージだけであったが、50歳を過ぎるころから、最も訪れてみたい場所になっていた。地理的には西にヨーロッパが拡がり、東にはアジアが拡がる。その間を隔てるのがボスポラス海峡。海峡の南はマルマラ海、北が黒海で天然の港を擁している。まさに東西の十字路であり、ユーラシア大陸とヨーロッパ大陸のつなぎ目に位置する。
人口は東京都をしのぐ1400万人。歴史的にも世界の大都市として位置付けられてきた。古代ギリシャ時代には紀元前の王の名を取ってビュザンティオンと呼ばれていたとされるイスタンブールは、ローマ帝国においてコンスタンティヌス1世が首都をローマから遷都し、自らの名を取ってコンスタンティノープルと名付けた。以降およそ900年の間は、キリスト教発展の要であり、ローマ帝国(330-395)時代には人口30~40万人を有す世界一の大都市であった。ビザンティン帝国(395-1204, 1261-1453)、ラテン帝国(1204-1261)時代の間でも世界の5指に入る有数の都市であり、様々な民族の商人が行き交っていたものと思う。
1453年にメフメト2世率いるオスマン帝国がこの街を征服し、イスタンブールと改称され、ムスリムを移住させるなどの政策によりイスラム都市化が進められた。また、ヨーロッパから商人を招き入れるなどして商業にも力を入れて、世界一の国際的大商業都市に成長していった(70万人)。オスマン帝国時代の統治はイスラム教国家の君主であるにも関わらず、ユダヤ教やキリスト教を迫害することなく新都に住まわせ、多くの歴史的建造物も破壊することなく、現在に至る多文化都市を形成するに至っている。

ビザンティン建築として有名なアヤソフィアは、その代表例である。350年頃に正統派キリスト教の大聖堂として建設され、ラテン帝国支配下においてはローマ・カトリック教徒の大聖堂とされていた素晴らしい教会である。オスマン帝国支配下になってからは、モスクの象徴であるミナレット4本が増築され、約500年間はモスクとして使われていた。モスクへの改修に際しては、聖母子像やキリスト教の絵画・モザイク画を漆喰で覆い隠し、「唯一神アッラー」や「預言者ムハンマド」を表すアラビア文字を装飾化して描かせている。 偶像崇拝を禁じるイスラム教国家の君主であるメフメト2世が、見事な建築物であるアヤソフィアの破壊を望まず、現代に引き継いでいるその精神の高邁さは称賛に価する。
1935年の博物館化に際しては、カトリックとイスラムの間で「返せ・返さない」の綱引きがあったということを耳にしたが、結局は聖母子像を覆っていた漆喰を取り除き、聖母子像と唯一神アッラーが隣り合わせで並ぶ異色の博物館が造られることとなった。この博物館は宗教の共存を象徴したものとして毎年200万人もの観光客を集めている。

イスタンブールの歴史は、キリスト教とイスラム教とが、互いの文化を征服しながらも、存在を認め合うことで生き続けてきた場所であり、現代世界の宗教対立や二極化対立に対して、異文化あるいは異質性の共存の一つの型として見ることができるのではないだろうか。
第一次世界大戦に敗れたオスマン帝国は解体され、1923年国父ケマル・アタテュルクによってトルコ共和国が建国された。アタティルクは憲法で(宗教的保守主義ではなく)世俗主義を標榜し、政教分離・近代化政策を採る国づくりを進めた。その結果、イスラムの香りを色濃く残しつつもヨーロッパ的な自由を感じさせるコスモポリタン都市へとイスタンブールは変貌を遂げた。しかし残念なことに、現政権のエルドアン大統領は3期目に入ったころから反政府勢力に圧力を掛け始め、SNSへのアクセスを遮断したり、個人のインターネット閲覧記録の収集などを合法化している。イスラム教育の制度化も志向しており、自由を謳歌してきた若年層を中心に反発が広がっている。イスラム圏を異質と見るEUは、トルコのEU加盟申請を11年間に渡り棚上げしており、エルドアン大統領のイスラム強化政策によって全く目途が立たないという状況となっている(EUそのものの維持も困難な状況がちらちら見え始めてきてはいるが)。

昨年7月にはクーデター未遂事件が発生し、その直後にエルドアン大統領は非常事態を宣言し、今年に入ってもそれを再延長している。市民への弾圧や、相次ぐテロによる外国人旅行客激減で経済は停滞しており、昨年7~9月のGDPは7年ぶりのマイナスとなった。それを反映してトルコリラ安(3ヶ月で20%以上)も止まらない状況が続く。

ケインズはその著書で「経済政策によって(政治的)価値観の対立を棚上げできる」と述べている。つまり、財政政策や金融政策の発動により所得再分配が行われ、(政治)価値中立的な「経済成長」を享受することで価値観の衝突を回避するという考え方である。アベノミクスにしても、成長の減速が続く中国にしても、トランプ新大統領の政策にしても、このケインズの理論を背負っているかのようである。経済が停滞すると対立が表面化する。それを回避するために経済政策を打って取りあえずの緩衝材とする。その結果、多くの国が財政赤字に陥り、手詰まりになっている指導者が政権から降ろされる事態となっている。新しい指導者はいっとき民衆の期待を過大に背負い登場する。しかし、市民の自由を縛る政策、民間の活力を生かせない政策、他国を圧力で制し自国にのみ利益を引き寄せようとする政策は今や機能しない。「有無相通」という言葉がある。一方にあって他方にないものを互いに融通し合ってうまくいくようにするという意味である。いよいよドナルド・トランプ氏が米大統領に就任するが、果たして前代未聞の政策の行く末はどういうことになるのだろうか。

物流再考

2017年1月2日 at 10:53 AM

便利になったネット通販を活用させてもらっています。Amazonの翌日配達(今や当日配達)は大変助かっています。楽天もよく使いますし、ゴルフ宅急便もちょくちょく使います。便利な時代になりました。特に送料無料は魅力的ですね。どこかに買い物に行けば、必ず交通費が掛かりますが、それが不要なのですから。
年末12月30日に以下のような記事がありました。「入社10年以上のベテランドライバーでさえも、朝7時半から夜11時までの長時間肉体労働で、昼食時間も取れず12月に入って3㎏痩せた」というものです。その中でもAmazonの物量とその伸びは群を抜いており、2~3割はAmazonのものとのこと。再配達率は2割弱。再々配達率も4%とドライバーの負担になっているようです。しかも宅急便は1個運んで増える手取りは20円。50個運んでも1000円と実入りが少なく、代表的な3K職場となってしまいました。現在Amazonの配送をほぼ一手に引き受けているヤマト運輸は、「休憩時間が法定通り取得できていないこと(労働基準法34条違反)」「時間外労働に対する賃金が支払われていないこと(同37条違反)」により、横浜北労働基準監督署から8月25日付で是正勧告を受けています。記事の中では、イギリスの宅配事情も紹介していますが、同じように過酷な状況のようです。
また、同月には佐川急便の配達員が荷物を投げつける映像(12月6日付とのこと)がYou Tubeに投稿され、話題となりました。「身勝手な感情でやってしまった。いろいろなイライラが重なっていた。反省している」とこの正社員は事実を認め、今は事務作業に従事しているそうです。
宅配業界では、ヤマト運輸・佐川急便・日本郵便の大手3社による苛烈なシェア争いが繰り広げられています。前述のようにAmazonの成長は著しく、各社にとって是が非でも確保したいビジネスでしょうが、2012年から運賃の適正化を進めてきた佐川急便(2005年ごろ日通のペリカン便に代わり受け持った)は2013年Amazonとの契約を打ち切ります。値上げを求める佐川急便に対し、Amazonはさらなる値下げとメール便にも判取り(つまり再配達要求)を要求し、最終的には決裂しました。代わりにヤマト運輸が引き受けましたが、現場の過酷さは佐川急便と変わるはずもなく疲弊した現場の実態が浮かび上がってきます。
ご承知のようにAmazonは2016年4月6日から送料を有料化しました。2000円未満の購入の場合は350円の送料がかかるようになりました。同時にプレミアム会員を募り、様々な特典を付けながら年間3900円で顧客への送料負担を求めました。タダより怖いものはないと言われながら、私も含めて無料配送に魅入られていました。最近は購入単位(ワインなら6本単位とか)を考え、妥当だと思う送料は支払っています。ポイントが貯まってくれば、送料分くらいは賄えます。
B2Bのビジネスでも、トヨタのかんばん方式に代表されるJIT(Just In Time)は納入回数を増やすことになり、これにかかわる運搬費等が増大したり、また「かんばん」による短期納入、または不測の事態による労働時間の延長等から、下請事業者は危険負担を覚悟しての見込み生産を行ない在庫を増加させるケースが多くなるなどと批判された。納入回数の増加についてみれば、月1回だったものが3~5回に、大物部品は毎日1回だったものが5回に時間納入とされた例もある。トヨタは、内示とかんばんによる納入数量差を3%以内に留めることを目標に掲げ、3ヶ月前から毎月生産数量を内示し、計画は内示のたびに修正されて、精度の高いものにして納入数量差を僅少に留めるよう努めている。しかし、これにより「日当り内示数が、1ヶ月間はほぼ同一となっているため下請事業者も1ヶ月間は同数の要員を配置すればよく、この効果は計り知れない。この要員配置での生産数量の変動は残業での調整が可能であり、それほどのダメージはない」という説明には素直に頷けない取引業者もいるであろう。いずれにせよステークホルダー内での合意形成を重んじなければならない。コストを下回るプライスはいずれ破綻するし、維持されているとするならば、どこかに嘘が隠れている。
さて、話を元に戻すと、2013年9月3日アマゾンジャパン・ロジスティクスは神奈川県小田原市において、新物流センター「アマゾン小田原FC(フルフィルメントセンター)」を本格稼働させ、配送の自社化への足掛かりを築き始めた。
2016年9月27日付のThe Wall Street Jornalでは、Amazonがこれまで米国内での宅配を委託してきたUSPおよびFedExとの契約を解除して、米国内での宅配業務については自社で実施することを検討していると報道されている。
Amazonが宅配業務を自前のものに切り替えた場合、流通コストの面でAmazonに太刀打ちできる業者は存在しないであろうと言われており、流通業界の地図が大きく塗り替えられる可能性が出てくる。今日の顧客が明日の脅威になる熾烈なビジネス競争の中、我々消費者が出来ることは、時間指定しておきながら留守にはしない、宅配ドライバーに「ご苦労様」の一言を添えるくらいしかないのであろうか。
Amazonは将来の配達を様々な形で検討をしている。「消費者の注文前に発送する特許2013年取得」「2017年からレジ無しコンビニ」「配達用無人機を備えた空中倉庫2016年特許申請」「2016年ドローン配送実験を英国で開始」「備品の自動注文サービスDash Replenishment Service(DRS)を2016年開始」などなど。いずれはAIやIoTなどの進展により、欲しいと思ったものが注文しなくても届く時代がやってくることになるのでしょうか。