NHKに求めること

2016年4月17日 at 4:13 PM

NHKは、放送法に基づき1926年に設立され、1950年には特殊法人となり公共放送を担う事業者として今日に至っている。放送法では「公共の福祉のために、あまねく日本全国で受信できるように豊かで、且つ良い放送番組による国内基幹放送を行うと同時に放送およびその受信の進歩発達に必要な業務を行い、合わせて国際放送および協会国際衛星放送を行うこと」と規定されており、その使命を果たす義務を負っている。
2月に話題になった高市総務大臣の、放送局が「政治的に公平であること」と定めた放送法の違反を繰り返した場合、電波法に基づき電波停止を命じる可能性に言及したところ、旧民主党や民放関係者、キャスター等から大きな反発が出ていることはご承知の通りである。論争のポイントは放送法4条(*)が法的規範(法律上の義務を生じるルール)なのか、倫理規範(単なる道徳上の努力義務しか生じないルール)なのかであるが、法規範性を持たない法律とはどういう意味があるのかと私自身は思うので、高市氏の発言は当然の事だと感じる。そもそも無線通信は、限られた無線周波数帯の有効活用と、混信や妨害を防ぐために免許制となっている。それゆえ電波は法律によって適正に管理されなければならない対象である。

これまでテレビ放送は数も制限され、その視覚的影響力が大きいために、特に編集段階における規範を求めたものと言える。テレビに映っているリアルな映像は、「事実」だと思い込んでしまう節があるが、編集によって前後を切り取り、反対の意味合いを持たせることは容易である。また、50人インタビューして、賛否半々だったとしても反対意見ばかり3つほど流せば、ほとんどの人が反対なのだと錯覚させることは、作為をもってすればいとも簡単なことである。
また、多くの放送人が事あるごとに言う「報道の自由」とは、本来は「事実を告げ知らせる行為の自由」であって、勝手なあるいは特殊な意図を持った発言や偏向報道を許しているものではない。40年近くに渡って喧伝されてきた朝日新聞による従軍慰安婦の捏造記事が批判される所以である。また、「報道の自由」は常に「人権との調和」との兼ね合いで語られるべきであり、事実だからと言って何でも報道して良いわけではない。「被害者の実名報道」や「被疑者の犯人視につながる」偏った報道、少年の更生を妨げるような糾弾は批判の対象となる。権力者の暴走をチェックするという論拠も放送人によって度々口にされるが、全て「事実に基づく」「国民の権利を損なう」事項が重要なのであって、重箱の隅を突くような、芸能レポーター並みに権力者の足をすくうような記事を繰り返し報道し、挙句の果てには国会の時間を無駄にする政治屋に使われるような話題にはうんざりする。

だいぶ、横道に逸れてしまったが、NHKに話を戻そう。NHKの受信料の支払い率は全国で72.5%(2012年サンプル調査)だそうである。支払い率の高い県は秋田、島根、新潟と保守県が並ぶ。支払い率の低いのは意外にも沖縄が42%で最低、以下、大阪、東京、北海道と続く。大都市での徴収の難しさ、広い北海道での徴収の難しさがあるのであろう。沖縄について調べてみると、沖縄のNHK受信料は本土に比べて15%ほど安い。沖縄返還後に導入された沖縄租税特別措置法というものがあり、車検も非常に安い(法定費用だけ比べても半額以下、それを利用した違法業者もいる)。それらの一環でNHKの受信料も安く設定されているが、返還後40年以上たっても徴収が進まないという事なのであろうと推察される。

序段の放送法「公共の福祉のために、あまねく日本全国で受信できるように」という部分では、極一部難視聴地域があるものの、ケーブルや光テレビなどの普及でほぼ問題ではなくなっているであろう。インターネットの発達によって多くの若者はテレビを見ないようになっている。幼少の時にはNHKしか見せてもらえないという厳格な家庭があったり、親御さんが安心して子供に見せられるのはNHKだけという妄信もあった。今やNHKの番組は民業(民放)圧迫かと思わせるようなお笑い、芸能(古典ならまだしもアイドルもの)、韓流ドラマも少なからずありますし、質の良い番組は明らかに減っていると思います。本当に「公共の福祉のため」の番組作りをやっているのか甚だ疑問があります。民放の収入源はスポンサー収入ですから視聴率に一喜一憂するのは仕方のないこととしても、NHKの収入は主に受信料です。30数億円の交付金収入もありますし、法人税も免除されています。職員数1万人、平均年齢41歳、平均給与1160万円という数字に納得感を持てない方々も多いでしょう。災害対策基本法ではNHKは指定公共機関に指定されていて、防災計画を作る義務や、気象警報・地震警報・津波警報などを直ちに国民に通知する義務もあります。今後NHKが特殊法人として本当に行わなければならない事業、収入基盤の再検討、スクランブル技術による「見たくない人」への選択権(契約自由の原則に違反していませんか?)など再考するべきだと思います。

放送法の後段の「国際放送」も今や非常に重要で、NHKは18言語で150か国以上にニュースや情報番組を中心に配信していると宣伝していますが、度々意見を異にする中国の中国国際放送局(CRI)は中国共通語と4つの方言、38の外国語を用いて200か国以上に向けて放送をしています。多言語や視聴地域の拡大のみならず、コンテンツの充実を図り、日本の仲間作りにも資するような施策を講じてもらいたいものです。NHKはその存在意義(raison d’ être)からして、一般大衆に媚びを売り、視聴率を稼ぐことではないはず。良質な番組を国内のみならず世界中に向けて発信し、誰でも無料で二次利用できるようにし、公共の福祉に供する姿に戻ってもらいたいと切に思います。

(*)放送法第4条 
放送事業者は、国内放送及び内外放送の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一  公安及び善良な風俗を害しないこと。
二  政治的に公平であること。
三  報道は事実をまげないですること。
四  意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。