観光立国日本へ

2013年5月16日 at 11:36 AM

昨日の日経新聞夕刊に「電車は時刻通りに正確に来るし、町は清潔で空気もきれい。治安が良く、深夜でも女性が普通に街を歩ける。人は優しくて親切だし、食事は美味しい。生け花や茶道にはおもてなしの心が込められている。能や文楽などの伝統芸能は奥が深く、惹きこまれてしまう。トイレは冬でも暖かく、温水洗浄便座は画期的な発明だ。織物の伝統は建築設計の進化にも通じる」と留学生のスピーチでの日本の印象が書かれていました。

私もアメリカ生活を11年半経験したり、色々な国を訪問したりしたので、日本の良い点、これら本当にそう思います。そして留学生の方がそのように感じてくれたことをとても嬉しく思いますし、沢山の方にそういった想いをもってもらいたいと思います。

あるランキング調査によると、行ってみたいとする日本の国の魅力は第3位だそうです(ちなみに第1位はイタリア)。しかしながらInboundの実数は第30位だそうで、最近は国を挙げて誘客をしている韓国に追い抜かれたそうです。日本にはこれまでの円高で来にくかった面もあるとは思いますが、アベノミクスで円安に振れましたし、どんどん観光客の皆さんに来ていただきたものです。最近ではタイの方など海外からの観光客が本場のラーメンを食べに来られるようですが、私も赴任期間中、日本に出張で来て、一番食べたかったのがラーメンでした。日本の食文化のみならずおもてなしの心など、どんどん日本の良いものを輸出して、本場の日本にも遊びに来てもらって日本を経済・文化両面で活性化したいですね。

昔、竹村健一氏が「日本の常識は世界の非常識」なんて言ってましたが、良い「日本の常識」を「世界の常識」にしていく努力もしていきましょう。上述のなぜ日本に来たいのに来ないのかの理由のひとつに「外国人への親近感が低い」というのがあります。確かにアメリカ在住時は目が合えば挨拶するのが常識でしたが、日本では知らない人とは目を合わさないし、挨拶もしませんね。外国人の方を見かけたら気さくに挨拶をしましょう。日本人の場合、言葉も壁も大きいかもわかりませんが、困っている外国人を見たら声を掛けてあげましょう。通じなかったとしてもあなたの誠意や優しさは通じます。ユニクロや楽天が社内用語を英語にしていますが、いずれは壁も低くなっていくと期待します(先日、竹中平蔵氏の話を聞きましたが、大学の入試にTOEFLを導入したのに続き、公務員試験にもTOEFLを導入して官からも英語力の底上げを図るらしいです)。

一方、都市の競争力某ランキングに目をやると東京はいつも第4位だそうです。上位4都市は変わらずNY、London、Paris、Tokyoだそうです。Londonはオリンピックの年に第1位になったそうですが、オリンピックで都市再開発をやると効果があるんですね。東京もオリンピックが来たらランクは上がるでしょうか。

さて、東京を第1位にするために何をすればいいのかというSimulationをしたそうです(By竹中氏)。3つの難を解決すればいいのですが、それは①物価が高い、②規制が多い、③アクセスが悪い、だそうです。竹中氏は小泉内閣の規制緩和の中心閣僚でしたから「さもありなん」といった感じでしょう。確かに外資を呼び込むにはこれら全て(①は難しそうですが)を変革していかなければならないというのは納得ができます。そのうち羽田空港と新幹線(リニア新線?)がつながるかもわかりませんが、乗り換えなしのアクセスは皆さん望むところでしょう。竹中氏は経済特区の話にも触れて、アベノミクス第3の矢である成長戦略は政府には具体的な事業を興すことはできない、特区を作って優良な会社に進出してきてもらって、その方々に民間の知恵を絞ってもらって経済を活性化したい(増収)、政府はその器をつくるとの事でした(確かに「民間投資を喚起する成長戦略」と安倍内閣では謳っています)。全国にいくつできるかわかりませんが、複数の経済特区が立ち上がりそうです。であれば、当然規制緩和とアクセスの改善は取り組まなければならない課題ですね。

これで財政の健全化(第4の矢)に向かえば言うことなしです。日本人は皆親切なのに、外国人には親切に見えないようなので、ちょっと勇気を持って外国人に接しましょう。日本に来ている外国人は少なくとも日本に悪い印象を持ってきている人たちではないと思いますし。

 

CSV (Creating Shared Value)

2013年5月16日 at 10:27 AM

ハーバードビジネススクールのマイケル・ポーター教授が提唱したというCSVという言葉が目に留まりましたので、考え方を勉強してみました。

基本的には社会問題の解決にビジネスの手法を持ち込んで解決していこうという考え方です。世の中には環境問題、貧困問題、障がい者雇用、住宅問題、健康問題など課題が沢山ありますが、一般にこれら社会問題は政府や自治体がやることで企業は関係ない(企業は税金を払っていますから、それらで賄ってくださいという考えが一般的でしょう)とされています。勿論主に大企業ではCSR活動を通じて良い評価を受け、良い市民を生み、害悪を減少させ、ステークスホルダーと良い関係を結ぶといった活動も行っています。社会問題解決の為に様々なNGO、NPO、ソーシャルビジネスも活動していますが、ポーター教授によれば、それらの活動は大規模に展開する技能や資源に乏しく、小規模の人を助けることはできても何億人もの人を助けることができないと論じています。

企業は利益をあげる力があるから社会問題を解決できるのであって、社会問題対策と利益創出は相反するものだと考えることは企業が多くのビジネスチャンスを逃しているとポーター教授は指摘しています。多くの企業がステークスホルダー間の利害関係のバランスを取らなければならない状況であったり、たとえば経済的な成功と環境的な成功はトレードオフ関係だと考えたりすることは危険な考え方だともしています。

日本は敗戦後、少なくない企業がCSVの考え方を持っていて、日本の再建の過程で多くの起業家・経営者が資本主義を通じて国家再建をしようと企業活動を行っていました。昨今の例をとれば震災が起きたら何ができるかと企業に問うと、寄付をしますとか、ボランティア社員を現地に派遣しますなどの答えが返ってきますが、社会変革のためには寄付からビジネスへの思考の変化が必要だとポーター教授は説いています。

たとえば住宅問題を例にとれば、寄付金に頼った財団から安価の住宅を提供するより、安価な家を建てる力を持つ企業のビジネスモデルを創造することができれば規模がさらに拡大し、問題解決にパワフルに寄与できて、社会的価値を増すことができるのです。

現代の若者たちは育ってきた時代背景から社会問題に関心が高く、多くの人が医療、環境、低所得、貧困といった社会的課題にNGOなどに参加して情熱をもって取り組んでいる人が少なくありません。その意識やその気持ちは素晴らしいもののその効果は限定的小規模で、根本的問題解決にはなりません。やはり構造問題に取り組まないと多くの人を助けることはできないわけです。

我々はどうやらモノの見方が狭くなってしまって、本来の企業の存在意義、あるいは企業が提供する社会的な価値、収益をあげることによってどのような社会的価値をもたらすことができるのか忘れてしまったようです。企業が持っている資源や専門性を使って社会問題を解決する、そして利益をあげて、社会的価値を増大させる、これがCSVの考え方の基本と理解しました。

第四回早稲田会議

2013年5月8日 at 4:15 PM

今日は毎年この時期に早稲田大学井深大記念ホールで行われる早稲田会議記念講演会に参加しました。2010年から始まったこの会議は正式にはCEOラウンドテーブルと呼ばれ、2日間に渡って経済人や学者が非公式で議論を行う場として催されています。私は一般公開となっている記念講演会に第二回目から出席していて、過去ファーストリテイリングの柳井正氏、コマツの坂根正弘氏が登壇し、今回は前中国駐在全権特命大使の丹羽宇一郎氏が登壇しました。

「日本のこれから」~企業は人なり~と題された講演では最近の日中韓の関係、中国が低成長期に入ったとする見解、日本の人口減少に触れ過去の延長線上に日本の繁栄はない、国を挙げて教育投資を行い、個人個人はもっと自立をしていかなければならないといった論旨を展開されました。

私の印象に残ったのは冒頭、中韓のトップが繰り返し口にしたという「中国の夢」(習近平主席)、「韓国の幸福」(朴槿惠大統領)というそれぞれの国の目標目的です。
国を率いるトップが何のために政(まつりごと)を行うかは国民として大いに気になることであり、それが論点として選挙が活性化し、健全な形で民意が反映されていくのが理想の姿のはずであろうと思います。前述の2国が民意を反映した民主主義か否かといった体制の議論は別にしても、「理想」を語らずして進歩はないと私は思います。

丹羽氏によれば中国の予算のうち最も大きなものは教育費(30兆円相当)、次に社会保障・就職関連、そして農林水産、公共投資と続き、これら合計で国家予算の半分近くにまで達するとの事。すっかり軍事費に大層費やしているのかと思っていた私の目を開かせていただきました。ちなみに国防予算は教育費の1/3程度だそうです。少なくとも中国上層部が教育分野こそがこれからの「中国の夢」の実現に最も必要だと認識して手を打っているということは伝わってきます。

一方、日本の教育予算はOECD加盟国でGDP比最低といった数字も丹羽氏は紹介していましたので、私なりに調べてみました。行政の縦割りだったり、地方予算で賄っている部分があったり、家計負担で塾などが流行っていたりと一概に日本の教育費が低いは言えない点もあるようです。共産圏とは比較しにくい話ですが、少なくとも日本には統一された教育国家戦略はないと言わざるをえないでしょう。これは今の日本にどんな国になろうとしているかといった目標目的意識が希薄だからなのではないでしょうか。

安倍総理の「三本の矢」の最も大事な成長戦略には、Life ScienceとEnergy革命が主要候補と丹羽氏は語っておられましたが、こういった成長分野に教育投資を含めて着実にやっていかなければならないと私も思います。民とか官とか言っている場合ではないのでしょう。時間は掛かるでしょうが、掛かるからこそ簡単には追いつかれない強みのある産業に育つものと思います。いつまでも日本の高度成長を支えた電機・自動車にばかり依存していてはいけませんね。もちろん各産業でInnovationを起こす努力は否定しませんが、新興国ができるようになっている領域に投資をしていっても経済合理性から言って回収の見込みが立ちません。

講演後の丹羽氏と早稲田大学ビジネススクールの内田和成教授との対談で出ていた話ですが、「日本人は皆同じことをやりたがる、隣と競争して勝った負けたと一喜一憂」と日本人の同質性・同胞性の現代における脆弱性を指摘していました。第三回の坂根氏も同じことに触れていたのを記憶していますが、氏は「強み弱みは状況によって反転するので、日本の特質を生かしてやっていけばいい」といった論旨を展開されていました。

いずれの議論も私なりに共通性を整理すると、「外に出よ」「自立せよ」「人を気にするな」「個性を磨け、そしてそれを際立たせよ」といった文言になりましょうか。今の私個人に関して言えば「毎日一歩でも1㎜でも前進しているかどうか」を自らに問いかけながら自分の頭で考えて、そして明日に向かっていきたいと思います。