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UNIVERSE 25 実験

1968年~1972年にかけてアメリカの動物行動学者ジョン B. カルフーンは「UNIVERSE 25」というネズミを使った実験を行った。この実験に選ばれたのは、4組8匹のネズミである。2.7m四方のスペースに高さ1.4mの側面を取り付け、快適に暮らせる256個の巣箱が用意された。垂直に伸びた16本のトンネルと4本の水平のトンネルによってネズミ達が自由に出入りできるように設計された。水も食料もふんだんに切れ目なく与えられ、ネズミにとって必要なものはすべて与えられたユートピアが作られた。それぞれの巣箱には最大15匹が生活できるように設計され、全体では3840匹のネズミがストレスなく生活できる空間が用意された。 実験施設に入れたネズミは、当初から新しい環境に慣れて縄張りを作り、巣作りを始め、104日後には初めて子ネズミが生まれた(フェーズA期間)。 ネズミの個体数はまさに鼠算のごとく55日ごとに倍になるペースで順調に増え続け315日目、個体数は620匹まで増えた(フェーズB期間)。 315日目以降になると、それまで自由に巣箱やえさ場を選んでいたネズミたちは、なぜか一か所に集まり始め、決まっ...
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エゾシカ増えすぎ問題

初めて道東を一巡りした。厚岸では丹頂鶴のつがいの舞う姿と特徴のある鳴き声に大自然を感じ、日本最大の砂嘴(さし)である野付半島では悪天候にもかかわらず、恐れるもの何もなしといった体で、ゆったりと散歩する三頭のエゾシカ親子を車窓から眺めることができた。翌日、晴天に恵まれ釧路湿原の昨年新調された木道を歩いたが、かなり高い位置まで樹幹に保護ネットを巻きつけ、エゾシカの剥皮害から守る措置を施していた木々が目についた。エゾシカが伸びをしても到底届かないであろう高さまで保護ネットがあるのは、雪が積もっても守れるようになっているというガイドの説明であった。 観光客にとってはエゾシカを目撃できるのは楽しい思い出になるが、エゾシカがミズナラやオニグルミなど実のなる木を食い尽くし、生態系を脅かすようになっている。近年は年間13万頭ほど駆除しているそうだが、道内で69万頭は生息していると推定されている。人間が狩猟などの数量調整をしないと4~5年で2倍に増えるほどエゾシカの繁殖力は強い。一方でハンターの高齢化や狩猟ライセンスを取ろうという若者も少なく、なかなか5頭/㎢以下程度の目標達成には程遠い現状だそうである...
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日本紙幣肖像物語

先月から新紙幣が流通し始めた。キャッシュレスが進む中で、最後の新紙幣発行と思われる。先日、所有口座銀行の支店前を通りかかったので、ATMから新紙幣が出てくると思い、16000円(期待は新紙幣各一枚ずつ)を引き出してみたが、出てきたのは福沢諭吉1枚と野口英世6枚であった。後日、知り合いが渋沢紙幣を持っていたので、交換してもらい初めてホログラムを鑑賞した(厚木勤務時代の部長は渋沢家直系で顔立ちもそっくりだったことを思い出しました)。このキャッシュレスの時代に全ての新紙幣が庶民の財布に収まるにはまだまだ時間がかかりそう。 紙幣の肖像デザインは国のアイデンティティを表すシンボルである。多くの国は国家元首を紙幣の肖像画に採用しているが、日本において最初に紙幣の肖像画になったのは1881年の神功(じんぐう)皇后の一円券である。それまでの政府紙幣(明治通宝:日本には精密印刷技術がなかったので、フランクフルトの印刷工場で製造されたため別名ゲルマン札)には「龍」が印刷されている。しかし、図柄が龍では偽造しやすく、かつ偽造されても肖像画のように人々の記憶に残らないので、偽札の判別が難しかった。他国の例に倣...
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ひとはなぜ戦争をするのか

1932年に国際連盟は天才物理学者アインシュタインに「今の文明において最も大事だと思われる事柄を、いちばん意見を交換したい相手と書簡を交わしてください」という依頼をした。アインシュタインが選んだ相手は心理学の大家フロイトで、そのテーマは「戦争」であった。『ひとはなぜ戦争するのか』は二人の往復書簡を収めた書籍である。 アインシュタインの主張は基本的には国際機関に立法と司法の権限を与えるという物理学者らしい力学的なものである。本書の解説でもアインシュタインを戦闘的平和主義者と称している。国際連盟、のちに国際連合と国際機関を設けて平和を創り出そうという試みは現代においても継続中である。しかしながら、現下のウクライナ紛争やイスラエルのガザ地区の戦闘、そして双方には当事者なりの理があり、それぞれに支援国がいる中においては、却って戦争を長期化させ、多くの無辜の民の血が流れ、命が失われ、生き地獄のような漂流難民を生み出している。 次にアインシュタインの主張は国際機関の決定に実効性を持たせるには権力が必要だと論じる。比較優位の軍事力などの権力がなければ、紛争を終結させることはできない。しかし、人はひと...
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旧ソ連バルト三国を訪れて

ポーランドを経由してバルト三国(北からエストニア、ラトビア、リトアニア)を訪問してきた。日本から見れば、バルト三国と称されるように旧ソ連邦の国々と十把一絡げに捉えられがちであるが、小国ながらそれぞれ特徴を持った国々である。 たとえば、エストニアは首都タリンからフェリーで2時間半でフィンランドのヘルシンキに着き、スカンジナビア色の強い国家であり、今や世界有数のデジタル化された電子国家である。5万人の電子居住権を持つ非居住者が登録されており、投資の促進やロシアに対する抑止力を高める(エストニアに好意的な人を世界中に増やす目的)努力をしている。 ラトビアは国民の27%がロシア系住民で、一般にはロシア語が利用されている。ロシア化を防ぐために、10%18万人の非国籍者(ソ連時代から帰化せずに永住してきた移民)はAlian Passportであり、選挙権はない。 リトアニアは15世紀末からのモスクワ大公国の脅威により戦禍にまみれ、ポーランドと共和国を形成することによって自国を守る手段とした歴史を持つ。 ポーランド含めいずれの国でも印象的だったのはウクライナの国旗がそこかしこに掲げられ、国を挙げて反...
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日本神話とギリシャ神話(今回は長文です)

日本神話において重要な役割を担うのはイザナギ・イザナミの夫婦神である。夫婦の営みによってヒルコ(水蛭子)という最初の子が生まれた。ヒルコは3年たっても足が立たなかった。夫婦神はこの子を葦船に入れて流して捨てた。次に淡島(泡のような、島としては未熟児)を生んだが、子供の数に入れなかった。 夫婦神はどうも良い子が生まれないので、天上に上り天つ神に相談した。天つ神が占ったところによると、イザナミから声をかけたのがいけなかったのだ、もう一度やり直せとのこと。今度はイザナギから声をかけた結果、無事に淡路島をはじめ、八つの島を生むことが出来た。 国生みが終わると、夫婦神は沢山の神を生んだ。海(の神)を生み、川(の神)を生み、山(の神)を生んだ。イザナミは最後に火の神であるカグツチを生んだ。その時に火熱で陰部を火傷して臥(ふ)した。イザナギの吐瀉物や汚物からさらに沢山の神が生まれたが、結局イザナミは火傷がもとで死んでしまった。 イザナギは妻の死を悲しんで泣いた。そして妻を死なせた子カグツチの頸を剣で切った。そのカグツチの死体からまたしても神々が生まれた。 イザナギは死んだ妻が忘れられず、黄泉の国まで...
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日本人アスリートの世界進出を喜ぶ

大谷翔平のスーパースターぶりは改めてここに記す必要がないほど、世界中の野球ファンや日本人には知られるに至った。このスーパースターは誰と結婚するのだろうと野次馬根性に火が付いたのは私だけではあるまい。メディアの報道を過熱させることなく伴侶を公開できたのは大谷の人間性と相まっての奇跡の技と言ってもいいのかもしれない。 大谷翔平が花巻東高校1年生時に立てた目標達成表「マンダラート」は有名になり、ビジネス書に「仕事に活かせる3つの教え」等として引用されるほどである。 大谷マンダラートの最終目標は8球団からドラフト1位指名を受けることであった。そのために「コントロール」「キレ」「スピード160km/h」「変化球」「体づくり」の5項目に加え、「メンタル」「人間性」「運」の3項目を記している。さらにこの8項目の達成のために必要な詳細項目をそれぞれの8項目に記載している。 たとえば、「メンタル」では「仲間を思いやる心」や「頭は冷静に心は熱く」。「人間性」では「愛される人間」「感謝」「礼儀」「継続力」「信頼される人間」など。「運」に至っては「ゴミ拾い」「道具を大切に使う」「プラス思考」「応援される人間に...
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和敬清寂(わけいせいじゃく)

和敬清寂とは、茶道の心得を示す標語である。それは、主人と賓客がお互いの心を和らげて謹み敬い、茶室の備品や茶会の雰囲気を清浄にするという意味である。わび茶の完成者として知られる千利休は「和」、「敬」、「清」、「寂」を「四規」として茶の湯の精神を後世に伝えた。 中国では紀元前から愛飲されていたお茶を、遣唐使が日本に持ち帰ったのは平安時代とされる。当時お茶はとても貴重で、天皇や貴族、僧侶だけしか口にすることができなかった。鎌倉時代に臨済宗を伝えた栄西が「お茶は良い薬です」と、時の将軍源実朝に献上したことが記録に残っているが、お茶と武士との関係はこの頃からあったようである。 南北朝時代には飲み比べの「闘茶」が流行し、その延長で宴会や賭け事に拡がったので、禁止令が出されたという記録も残っている。室町時代には(当時は高級であった)風呂上りに熱い茶を飲み、ご馳走を食べて贅沢をするというように上級社会の催事になっていったようである。 千利休は言わずと知れた日本一有名な茶人であるが、天下人豊臣秀吉の側近となってからは政事の表舞台に上っていくことになる。利休という名前は、のちに禁中茶会(1585年)にあた...
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新日本建設に関する詔書(1946.1.1)

ここに新年を迎える。 顧みれば、明治天皇は明治の初め、国是として五箇条の御誓文をお示しになられた。 それによると、 一、幅広く会議を開き、何事も議論をして世論に従い決めなければならない。 一、身分の高い者も低い者も心をひとつにして、積極的に国のあり方を考えていかなければならない。 一、中央政府も地方の領主も、庶民に至るまで、それぞれ志を遂げ、人々が生きていて幸せに感じる事が重要である。 一、古くからの悪しき習慣を打ち破り、人類普遍の正しい道に基づいていかなければならない。 一、知識を世界に求め、大いにこの国の基盤となる力を高めなければならない。 お考えは公明正大であり、付け加えなければならない事柄は何もない。 わたしはここに誓いを新たにして国の運命を開いていきたい。 当然このご趣旨に則り、古くからの悪しき習慣を捨て、民意を自由に広げてもらい、官民を挙げて平和主義に徹し、教養を豊かにして文化を築き、そうして国民生活の向上を図り、新日本を建設しなければならない。 大小の都市の被った戦禍、罹災者の苦しみ、産業の停滞、食糧の不足、失業者増加の趨勢などは実に心を痛める事である。 しかしながら、我...
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教育の行く末

私は声を荒げることはめったにない人間だが、過去に役所の窓口、銀行の窓口でその行為に出たことがある。病院の医者の前でも声を荒げたくなったことはあるが、それは抑えた。その代わりと言ってはなんだが、これまで低かった血圧が年のせいもあってか急激に上がった。 これらに共通項があるとすれば、それは杓子定規で融通が利かないということである。それは取りも直さず社会通念とずれている世界にその住人たちはいるということでもあろう。全てを法律や規範、ルールに縛られて状況に応じた臨機応変な対応ができない人たちの集団である。世の中の総てをルール化することはできない。ルールや法律は常に後付けで作られる運命にあり、最近はとみに社会の変革が猛スピードで進んでいるのに加えてコンプライアンスなるものが跋扈して臨機応変に対応を試みると責任を問われ炎上する。活力のない世界になるはずである。 日本の法体系は基本的にポジティブ・リストによって作られる傾向があり、やって良いことだけが書いてある。であるから、新しい事柄は新しい法律を作るまで対応できない。役所には「許可願い」を出して受理されないと事を起こせない。ネガティブ・リストは原則...